岡山大学、大阪公立大学、九州工業大学、産業技術総合研究所、春日電機は、シリコンフォトニクスを用いた人工衛星用の静電気センサを開発した(ニュースリリース)。

近年、人工衛星を活用した宇宙ビジネスが拡大している。小型衛星ネットワーク、民間宇宙ステーション、月面基地構築など、革新的な宇宙ミッションが提案される中、衛星には新たな機能の追加が求められる一方、人工衛星の故障率低減が宇宙デブリの増加を防ぐ観点などから重要となっている。
宇宙空間はプラズマと放射線が存在するため人工衛星は帯電しやすい環境にさらされている。この帯電に起因する静電気トラブルは衛星の主要な故障要因とされているが、利用しやすいセンサがないことが衛星事業者を悩ませてきた。
研究グループは、シリコンフォトニクス技術を応用し、上記の要素をすべて満たす宇宙用帯電センサ「フォトニック帯電センサ」を開発した。センサモジュールは30mmx25mm、重量は約100g。モジュール内部には小サイズ1mmx1mmのシリコン光導波路チップを搭載し、ここが帯電を検知するコア領域。モジュールには光ファイバが接続されており、光を発生・検出する電子機器をセンサ部から離して配置できる構成となっている。
研究グループは、開発したモジュールを宇宙空間と同様のプラズマ環境中に設置し、電位差ΔVを変化させながら、モジュールを透過してくる光の強度を測定した。その結果、ΔVの変化に応じて透過光強度が系統的に変化することを見いだした。
詳細な解析により、プラズマ環境下でシリコン導波路に蓄積した電荷が自由キャリアを生み、導波路を伝搬する光の吸収損失を増加させることが原因であると突き止めた。これは、半導体分野で知られる自由キャリア吸収と呼ばれる光学現象に基づく。

さらに、自由キャリア吸収の強さが電位差ΔVに比例して変化することから、透過光強度を読み出すことで宇宙機と衛星の電位差を推定できることを実証した。加えて、静電気放電(ESD)が発生し得る大きな電位差の領域においても、このセンサは故障することなく電位を計測できることを確認した。これは、センシング部位に電子回路を用いず、光回路のみを用いる測定原理によって、放電に伴う電気的ダメージを受けにくい。
研究グループは、将来的には、今回の技術を、宇宙活動の高度化に伴い増大する多様な静電気リスクに対応する宇宙の安全インフラとすることを目指すとしている。



