農工大、レーザー光による熱電デバイスを用いた新たな光ワイヤレス給電技術を開発

東京農工大学の研究グループは、レーザー光を熱に変換する干渉型薄膜吸収体を搭載した熱電デバイスにより、新たな光ワイヤレス給電技術を実証した(ニュースリリース)。

光ワイヤレス給電(OWPT)は、レーザー光やLED光などの光エネルギーを用いて電力を非接触で供給する技術であり、IoTデバイス等を離れた場所から駆動させるための有望な技術として注目されている。現在、受光部には主に太陽電池(光電変換)が用いられているが、太陽電池は光が照射された面のみが発電に寄与するため、受光面全体に光を当てる精密な制御が必要であった。すなわち、限られた照射条件下で、いかに効率的かつ柔軟にエネルギーを回収するかという問いは、次世代のワイヤレス給電プラットフォーム構築において大きな壁となっている。

(図) (a) 薄膜吸収体の模式図,(b, c) 断面および平面の走査型電子顕微鏡(SEM)像。(b) および (c) のスケールバーはそれぞれ 300 nmおよび 100 nm を示す。
(d) 薄膜吸収体の吸収スペクトルの測定値(赤線)と計算値(黒線)の比較。

研究グループは、薄膜吸収体を搭載した熱電デバイスを用いた新たな光ワイヤレス給電方式を提案し、その特性を実験的に検証した。今回の手法では、入射した光を薄膜吸収体によって一度熱に変換し、その温度差を利用して熱電発電するため、従来の光電変換とは異なる動作原理を有している。波長450nmのレーザー光を用いた給電実験において、出力電力2.0mW、変換効率0.2%を達成した。この出力電力は、IoTデバイスを駆動させるのに十分な発電量といえる。

(図)出力電力の、450 nmの波長の光を照射した際における、薄膜吸収体電極(赤)および対照電極(黒)での熱電デバイスの発生特性。

さらに重要な結果として、光をデバイスの一部にのみ照射する微小領域への照射においても、発生した局所的な熱が吸収体基板全体に拡散する現象を確認した。これにより、直接光が当たっていない領域を含む複数の熱電素子が同時に発電に寄与することが明らかとなった。このような熱拡散を利用した発電は太陽電池では実現できない特性であり、受光面全体への精密な光照射を必要とせずに効率的な電力取得を可能にする。今回の研究により、熱電デバイスを用いたOWPTの実現可能性と、その独自の優位性が示さた。

この
技術は、均一な熱輻射環境で発電するメタマテリアル熱電変換[1–5]と統合することで、画期的なハイブリッド給電システムへ展開できる可能性がある。近年、センサーの高機能化に伴い、温度や振動などを常時モニタリングするための低消費電力動作が求められる一方で、データ通信時には一時的に高い電力が必要となる。このように、平常時には低電力、通信時には高出力という相反する電力要求をいかに両立させるかが課題となっている。提案するシステムは、この課題を解決する新しい電源技術として期待されるという。

このシステムでは、メタマテリアル熱電変換がIoTセンサーの自律駆動に必要な微弱電力を常時供給し、データの遠隔送信時など大きな電力が必要な場面では、本研究のOWPTによって追加のエネルギーを一時的に供給する。このように、独立した2つの熱電メカニズムをシステムレベルで統合するデュアルデバイスは、低電力から高電力までをカバーする汎用性の高いエネルギープラットフォームとして、次世代の自立型IoTデバイスの普及を加速させると期待されるとしている。

(図)メタマテリアル熱電変換と熱電型OWPTを組み合わせたハイブリッドシステムの概念図。24時間発電およびスケーラブルなIoT電源供給を実現する。
(a) 環境センシング時には,一様な熱放射環境下において,メタマテリアル熱電変換によってIoTセンサが駆動される。

(b) 無線データ伝送時には,熱電型OWPTに光を入射させることで,無線通信デバイスを駆動し,データの無線送信を行う。
(c) メタマテリアル熱電変換と薄膜吸収体を用いたOWPTを組み合わせたハイブリッドシステムの統合方法の模式図。熱電素子の両側にそれぞれの吸収体を配置する構成を想定している。
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