タンデム型ペロブスカイト太陽電池の国内市場、累積導入量を12.5GWと予測

矢野経済研究所は、タンデム型ペロブスカイト太陽電池(タンデム型PSC)の国内市場を調査し、参入企業の動向、将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。

日本国内におけるペロブスカイト太陽電池導入量予測(累積)
(表)日本国内におけるペロブスカイト太陽電池導入量予測(累積)

2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画(経済産業省)では2040年度の国内発電電力量の23~29%を太陽光発電とする電源構成見通しが示され、同基本計画では2040年のペロブスカイト太陽電池(PSC)導入量目標を約20GWとした。これを達成するには、太陽電池の設置面積拡大に加え、タンデム化による面積当たりの変換効率の向上(発電量の拡大)が必須。そして、単接合のPSCを開発するメーカーだけでなく、既存の結晶Si太陽電池を展開するメーカーによる、自社の結晶Si太陽電池を活用したタンデム型PSCの開発の取り組みが進んでいるという。

日本では2012年にFIT(固定価格買取制度)が導入され、それまで住宅屋根置きが中心であった太陽電池に事業用や発電所などの産業用途が加わり、需要が急速に拡大した。太陽電池モジュールの耐用年数を20年とした場合、2032年にはFIT導入に伴い大量に設置された太陽電池のリプレース需要が発生すると予測される。この需要に間に合わせるためにも、タンデム型PSC開発のスピードアップが求められるとしている。

PSCの需要(導入量)は、新規に導入される量に加え、耐用年数を過ぎた既設の結晶Si太陽電池をリプレースする際にPSCへと置き換えることで高効率化を実現するという用途でも期待されている。

新規導入電力において単接合PSC、多接合のタンデム型PSCのいずれが採用されるか、現時点での予測は難しいとしている。現在単接合PSCを開発しているメーカーの多くが、将来の高効率化を見越してタンデム型PSCの開発にも着手しており、当初は単接合PSCからスタートしても最終的に単接合PSCとタンデム型PSCをニーズに合わせて棲み分けていくものと予測するという。

新規導入電力でタンデム型PSCが採用される際、重量制限のある建物への設置や、建物の壁面・開口部などの垂直設置、曲面・凹凸のある場所への設置は薄肉・軽量・フレキシブルなペロブスカイト/ペロブスカイトまたはペロブスカイト/CIGS(銅・インジウム・ガリウム・セレン化合物)が採用される可能性が高い。

一方、リプレースの場合は住宅屋根、ビルの屋上、太陽光発電所など既に結晶Si太陽電池が設置されていた場所での置き換えであり、設置方法も既設の結晶Si太陽電池と同様であると想定されることから、ペロブスカイト/ペロブスカイト、ペロブスカイト/CIGSのような新しい製品ではなく、結晶Siをベースとしたペロブスカイト/Si太陽電池が主に採用されるものと予測されるとしている。

タンデム型PSCは中国や欧米など海外でも開発が進められており、将来は日本国内市場に流入する海外製品との価格競争が発生する可能性がある。海外品との価格競争を避けるためには、安全基準、耐火基準、環境規制など日本が規制をかけやすく、海外勢にとって参入障壁の高い用途でいち早く採用実績を確立し、一定以上のシェアを押さえて国産品のマーケットを作っていくことが必要である。具体的には、住宅・BIPV(建物一体型太陽光発電)、車載、農地、水上発電などは日本独自の規制が強く、ここでの実績がその先の市場へとつながると考える。

ボトムセルに結晶Siを使用したペロブスカイト/Siでは、ボトムセルの結晶Siの耐用年数が20年前後であるのに対し、トップセルのペロブスカイトは、現状ではその半分程度であり、国内メーカーでは各社ともボトムのSiと同様の20年耐久を目標に開発を進めている。日本メーカーは製品開発に当たり「完成された品質」を求める傾向にあり、タンデム型PSCについても20年耐久が実現するまでは製品化されない可能性があるが、開発に時間がかかっている間に品質は一定水準だが安価な海外製品が流入しシェアを奪われてしまうリスクもある。これを避けるためには、既に達成している10年程度の耐久性があれば十分という用途を開発し、そこに向けた製品開発と提案をいかに進めて行けるか、言い換えれば完璧主義であった日本のモノづくりのあり方を転換する取り組みが重要になる。

一方、ペロブスカイト/ペロブスカイトやペロブスカイト/CIGSのように結晶Siを使用しないタンデム型PSCは、軽量、フレキシブル、透明など結晶Siでは難しい対応が可能であることから、建物の壁面や開口部、重量制限のある屋根などに設置し、ビルや商業施設などが使用する電力を自ら発電する自家消費型発電(電力の地産地消)としての採用が期待されている。また、フィルムベースのタンデム型PSCは、その軽さやフレキシブル性から空飛ぶ基地局であるHAPSやドローン、空飛ぶクルマなどの飛行体の電源として適性がある。

これら用途での採用を獲得するにはペロブスカイトの耐久性向上、特に水分による劣化をいかに抑えるかが課題となり、セルの中への水分の浸入を阻止するバリア機能が必須となる。水分によるペロブスカイト層の劣化を防ぐため、バリア層には最低でも10-4g/㎡/day、一定以上の期間の信頼性を確保するには10-5g/㎡/day程度が必要であるとされるが、現状ではこれを満たす超ハイバリアフィルムは市販されておらず、タンデム型PSCメーカーと大学・研究機関、バリアフィルムメーカーとが一体となっての開発が求められているとしている。

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