フォトニクスファウンドリーが、OFC 2026で示した技術戦略と将来展望

 AI普及で通信業界はまさに活気づいている。そんな中にあって、2026年3月17日から19日の3日間、光通信・ネットワーク分野における世界最大の展示会・カンファレンス「OFC」がロサンゼルスのコンベンション・センターで開催された。

 その展示会場に出展していたオランダのフォトニクスファウンドリー、SMART Photonics(スマートフォトニクス)。同社はインジウムリン(InP)を用いたフォトニック集積回路(PIC)の製造に特化したピュアプレイ・ファウンドリーである。

 データ通信やAI分野の急成長を背景に、量産化に向けた新たなステージに入りつつある同社のCEOである、Johan Feenstra(ヨハン フェーンストラ)氏に、技術戦略と今後の展望について話を聞いた。

SMART Photonics CEO Johan Feenstra(ヨハン フェーンストラ)
2019年よりSMART PhotonicsのCEOを務め、1億5,000万ユーロの資金調達を主導。Liquavista社の共同創業者で、同社のサムスンおよびアマゾンへの買収に貢献。オランダ・フローニンゲン大学で固体物理学の博士号を取得

InP集積技術を核としたファウンドリーモデル

―SMART Photonicsの事業概要と強みについて

 SMART Photonicsは、InPを用いたフォトニック半導体チップの製造に特化したピュアプレイ・ファウンドリーです。InPの最大の特長は、レーザーや変調器といったアクティブ素子と、導波路などのパッシブ素子を単一チップ上に集積できる点にあります。

 この特性を活かし、複数の機能を1チップ上に統合する高度な集積技術を強みとしています。用途は特定のアプリケーションに限定せず、顧客の要求に応じて設計・製造を行う点も特長です。

 ビジネスモデルとしては、顧客がチップ設計を担い、製造を担当する。顧客にはPDK(プロセス・デザイン・キット)が提供され、ビルディングブロックを組み合わせることで、目的に応じたフォトニック回路を設計できる仕組みとなっています。

 このプラットフォームの柔軟性により、シンプルなデバイスから数百の機能ブロックを組み合わせた複雑なPICまで、幅広い製造に対応しています。

OFCで発表した高速化と6インチ化の戦略

―今回のOFCでの発表内容と出展の狙いは

 OFCは当社にとって最も重要な展示会の一つであり、主要顧客と直接対話できる場として位置付けています。今回の展示では、今後の方向性を示す2つの重要な発表を行ないました。

 1つは高速変調器です。110Gbpsを超える性能を実現し、将来的には1レーン400Gbpsへの対応を目指す。これは1.6T、3.2Tといった次世代通信システムに不可欠な技術であり、今後さらなる高速化も視野に入れて開発を進めています。

 もう1つは6インチウエハー対応ファブの建設です。オランダ応用科学研究機構との協業のもとで、現在主流の4インチから6インチへ移行させ、生産量の拡大とコスト低減を図ります。新ファブは2027年末の稼働開始、2028年からの量産を予定しています。

 InP分野における6インチ化はまだ限られた取り組みで、当社のスケールアップ戦略を象徴する動きといえるでしょう。

InPフォトニクス集積基板

集積フォトニクスの「民主化」と広がる応用領域

―今後のターゲット市場と将来の方向性について教えてください

 現在の主力市場はデータ通信、通信インフラ、AI分野ですが、当社はさらに広い応用展開を見据えています。特に6インチ化によるコスト低減が進めば、センサー分野をはじめとする新たな市場が開けると考えています。

 自動運転、ロボティクス、医療、農業、民生機器など、InPフォトニクスの応用範囲は極めて広いものがあります。こうした展開を背景に、当社は集積フォトニクスの「民主化」、すなわちファブレス企業にも製造基盤を提供することを重要な使命としています。

 また、AIの進展に伴う消費電力の課題に対して、フォトニクスは有効な解決手段の一つと位置付けています。我々はAIの成長を一過性のブームではなく、長期的なトレンドと捉えています。

 材料戦略としてはInPに集中する方針を維持し、他材料への展開は現時点では想定していません。今後は多品種少量から大量生産へと移行し、フォトニクス分野における本格的な量産ファウンドリーの確立を目指します。

日本との協業に見る価値観と期待

―日本市場および日本企業との関係について

 日本企業との長年の協業経験を有しており、その技術力と姿勢を高く評価しています。特に、技術への敬意、責任感、長期的な関係構築を重視する点は、当社の価値観とも一致していると思います。

 日本は顧客としてだけでなく、サプライチェーンのパートナーとしても重要な存在であり、今後も協業の深化を期待しています。欧州連合(EU)と日本は、ともに集積フォトニクス産業における強いプレゼンスを持っています。

 ※本インタビューは、月刊オプトロニクス2026年5月号に掲載した記事を再編集したものです。

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