メタサーフェスが生み出す、光学の新常識

新聞やニュースでも取り上げられる機会が増えたメタサーフェス。大阪大学の髙原淳一教授は、光学的なアプローチでメタサーフェスの研究を進めている。髙原教授の研究の歩みをたどりつつ、その可能性と将来像について話を伺った。

大阪大学 大学院工学研究科 物理学系専攻 教授 髙原 淳一 氏

メタサーフェスの登場が導いた、光学技術の新たな一歩

光を操る人工構造

─メタマテリアル・メタサーフェスとは

メタマテリアルとは、人工的に作る原子「メタ原子」を三次元的に並べ、たとえば負の屈折率のような、自然界には存在しない光の性質を作り出そうという考えから始まりました。ただ、三次元的な構造は作るのが非常に難しかったのです。そこで、だんだんと薄い構造へと発展していき、現在では半導体の微細加工技術で作りやすいメタサーフェスという二次元的な構造も登場しました。基板の上にメタ原子を並べ、形や配置を工夫することで光の機能を制御します。

─メタサーフェスに注目したきっかけについて

2000年前後、負の屈折率が初めて実証されたときは「画期的なことが起きた」と世界中で大変話題になりました。周囲の研究者は皆、メタマテリアルの基本構造であるスプリットリング共振器を作って試していました。当時、私は大学で助手をしており、集積回路の基礎技術であるプラズモニック導波路、そして高効率な白熱電球である「エコ電球」について研究していました。

エコ電球は、フィラメントの表面に微細な穴構造を加工して熱放射を制御するものです。現在の言葉で言えば、一種のメタサーフェスと言えると思います。そのため自然と興味を持ち、研究の傍ら注目していました。

メタサーフェスについて、終始和やかな雰囲気の中で取材が進んだ─大阪大学吹田キャンパス

─先生の研究されている内容を具体的に教えてください

現在は、シリコンを用いた誘電体メタサーフェスを主に研究しています。以前のメタサーフェスは金属を用いたものが多かったのですが、金属では光の吸収損失が大きくなってしまいます。そのため現在は、光を通しやすく損失の少ない誘電体材料が主流になっています。誘電体メタサーフェスの材料にはTiO2やSi3N4などさまざまなものがありますが、私はシリコンを用いて研究を行なっています。シリコンは半導体産業の中心的な材料であり、シリコンフォトニクスとの相性もよいため、将来的な光集積回路との連携も期待できます。

─どのように応用されていきますか

私の研究室では、どちらかというと基礎から応用の種を見つけ出すことを目指しています。その中で、「ミー共振型メタサーフェス」を用いた研究を行なっています。ミートロニクスという分野がありますが、これはいわばエレクトロニクスの光版のようなものです。一番分かりやすい例は、材料の色ではなく構造によって色を出す「構造色」です。それから、グラフェンや遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)と呼ばれる二次元ナノ材料があります。これらは原子一層ほどの非常に薄い材料であるため、そのままでは光がほとんど相互作用しません。そこでメタサーフェスを用いて光との相互作用を増強します。

その結果、光が材料に強く作用するようになり、センサーとして機能させるといった応用が可能になります。現状では実用化の前段階ですが、実用化されれば非常に大きなインパクトがあると考えています。特にグラフェンやTMDCのような材料をフォトニクスに取り入れる流れは、今後確実に進んでいくでしょう。

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