NHK技研公開でみた、放送を支える光の新たな一歩 

2026年5月26日、東京都世田谷区のNHK放送技術研究所で、毎年恒例のイベント「NHK技研公開」のプレス発表会が開催された。NHKの最新放送技術を広く紹介する同イベントは、5月28日から31日まで一般公開されている。今年は「NHK Tech Week」と題し、放送技術の展示会「NHK TEC EXPO」と初めて同時開催された。

NHK放送技術研究所長神田 菊文 氏

今回の開催テーマは「拓く、支える これからも」。NHK放送技術研究所長の神田菊文氏は、「昨年は日本で放送が始まって100年という節目の年だった。次の100年に向けた第一歩を踏み出した今年、これからも技術でメディアの発展を切り拓き、支えていきたい」と述べ、技術を通じてメディアを新たなステージへと進めていく姿勢を示した。

編集部では研究成果や開発中の技術を中心に取材した。放送開始から101年目という新たなスタートを切ったメディア業界において、光技術はどのように進化しているのか。会場では、昨年からさらに発展した技術に加え、新たに開発された注目の技術にも出会うことができた。今回はその中からいくつか紹介する。

■ドローン用無線伝送技術

会場の入口を入ってまず目に入ったのは、2機のドローン。一つは、映像を遠くまで届けることをコンセプトに開発された「空飛ぶロボカメ」だ。これまでヘリコプターなどで撮影した空撮映像は、放送局の屋上や山間部などに設置された受信局で受信していた。これに対し、同研究ではドローンから既存の受信局へ直接映像を伝送する技術の開発を進めている。

長距離伝送を実現するうえで重要となるのが、電波を受信局の方向へ正確に向ける技術だ。研究チームは、円周上に12面のアンテナを配置したアンテナ切替装置を開発。ドローンが持つGPS情報やコンパス情報をもとに、受信局の位置に合わせて使用するアンテナを切り替えることで、安定した映像伝送を可能にしている。

もう一つは、「IP回線中継ドローン」である。こちらは、従来は一方向だった無線回線を双方向化した点が特長だ。これにより、ドローンから映像を送るだけでなく、基地局側からドローンのカメラを制御したり、通信回線として利用したりすることができる。

災害時など、携帯電話回線が使えない場所でも、ドローンを介して一時的な通信環境を構築できる可能性がある。空撮映像の伝送に加え、通信インフラを補完する技術としても期待される展示となっていた。

空飛ぶロボカメ(左)と「OP回線中継ドローン」の展示

■ライトフィールドヘッドマウントディスプレー

目が疲れにくいヘッドマウントディスプレーの実現を目指した研究も紹介された。この開発品の大きな特長は、目のピントを自然に手前や奥へ合わせられるようにする点にある。人間の目は、近くのものを見るときには近くに、遠くのものを見るときには遠くに自然とピントを合わせている。この仕組みをヘッドマウントディスプレーに取り入れることで、より自然で違和感の少ない映像表示を目指している。

従来のヘッドマウントディスプレーでは、映像上に奥行きがあっても、目のピント位置は一定の距離に固定されやすい。そのため、実際の見え方とのずれが生じ、視覚疲労につながる場合がある。今回の研究では、手前や奥にある対象に対して目が自然にピントを合わせられる表示方式を用いることで、この課題の解決を図っている。

また、装置の小型化も進んでいる。以前の展示では、ディスプレーの手前に配置した複数のレンズの間にスペースがあり、その分、装置に厚みがあった。今回は光学系を改良し、レンズを一体的に設計することで薄型化を実現した。さらに、高解像度のディスプレーパネルを採用することで、表示映像の解像度も向上している。

ヘッドマウントディスプレー(左)と、レンズが一体型になったディスプレー内部の様子(右)。
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