東京科学大学と量子科学技術研究開発機構(QST)の研究グループは、自己組織化した超分子ナノファイバーにおいて励起子の長距離輸送を観測し、さらに表面プラズモンを利用して、その輸送を増強することに成功した(ニュースリリース)。
励起子は、物質が光を吸収することで生じるエネルギー状態で、有機太陽電池の電荷生成や発光デバイス、光捕集系におけるエネルギー移動などに重要な役割を持つ。しかし、多くの有機半導体では、エネルギーの無秩序性や欠陥、分子間相互作用の弱さなどにより、その拡散長は5~20nm程度にとどまる。
研究グループは、9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン(BPEA)発色団の両端にアミド基を導入し、水素結合によって発色団を規則的に配列した超分子ナノファイバーを作製した。位置依存フォトルミネッセンス寿命測定により励起子輸送を解析したところ、拡散係数は最大0.7cm2/s、輸送長は最大350nmに達した。これらは、有機固体中の励起子として最高水準の値だという。

(b)超分子ナノファイバーの蛍光顕微鏡イメージ
(c)ナノファイバーの1か所で得られた蛍光寿命対位置の2次元プロット
(d)励起子拡散係数Dの分布
(e)励起子輸送長LTの分布
(f)最も強い遷移について自然遷移軌道対を用いた励起状態の可視化
さらに、フラグメント分子軌道法による励起状態計算を行った結果、電子密度が2~3個のモノマーユニットにわたって非局在化し、局所励起状態と電荷移動状態が顕著に混合していることが分かった。これらが長距離輸送に寄与するとみられる。
また、金薄膜にナノホールを正方格子状に形成したプラズモン基板上にナノファイバーを配置したところ、励起子輸送が2倍以上に増強され、輸送長は1µmを超えた。増強効果はナノファイバーとナノホールアレイの格子方向との角度に依存し、両者を平行に配置した場合に最大となった。
研究グループは、今回の成果が高効率な有機太陽電池や発光デバイスなど、励起子輸送を利用する光電子デバイスの設計につながるとしている。



