鳥取大,負の走光性を有する人工システムを構築

鳥取大学の研究グループは,光刺激によるペプチドナノファイバー形成を駆動力として,マイクロメートルサイズのDNA球状集合体(ヌクレオスフェア)の運動推進と運動方向制御に成功した(ニュースリリース)。

生物の中には光の方向に応じて運動方向が変わるものが存在し,例えば緑藻類のクラミドモナスは状況に応じて光に近付く「正の走光性」と光から遠ざかる「負の走光性」を使い分けている。

研究グループはこれまでに,光照射によってジャイアントリポソーム上でペプチドナノファイバー形成を誘起することで,その並進運動推進に成功している。しかし,その運動方向は光照射方向に関わらずランダムであり,走光性は見られなかった。これは,リポソームは中空構造であるため,光が透過して光照射方向とは関係なくランダムにナノファイバー形成したためだと考えられるという。

そこで,内部までDNAが詰まったヌクレオスフェアを新たな「車体」として用いることで,光照射面でのみペプチドナノファイバー形成を誘起し,走光性を付与できると考えた。

まず,DNAと自己集合部位であるβシート形成ペプチドを光解離性アミノ酸で連結したペプチド-DNAコンジュゲートを作製した。このコンジュゲートにUV光(365nm)を照射すると,ペプチド部位が脱離し,自己集合してナノファイバーを形成する。研究では,これまでに開発したコンジュゲートを改良し,均一なナノファイバーを速く形成するコンジュゲート3を用いた。

ヌクレオスフェア(NS)表面にコンジュゲート3を修飾した3-NSを調製してUV光を照射したところ,光から逃げる方向に運動する負の走光性が見られた。

一方で光照射を行なわない場合や,コンジュゲート3の代わりにDNA(dA20)のみを修飾したdA20-NSに光照射を行なった場合は,そのような方向性のある運動は確認されなかった。また,その運動速度はコンジュゲート3の濃度に依存して増大することがわかった。

したがって,コンジュゲート3を修飾することで,光照射によりヌクレオスフェア上でナノファイバー形成が誘起され,運動が推進されたと考えられる。実際に,3-NSに光照射を行なうとその表面で非対称的にナノファイバーの集合体の形成が確認され,ヌクレオスフェアを用いることで,光照射による非対称的なナノファイバー形成を駆動力とした負の走光性を有する人工分子システムの開発に成功した。

これは,ペプチドナノファイバー形成を駆動力とした運動システムに走光性を付与した初めての例であり,生物の運動システムの解明や分子輸送システムへの応用が期待されるとしている。

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