理研,電場で駆動する液晶性の強誘電体を発見

理化学研究所(理研)は,強誘電性ネマチックと呼ばれる新しい液晶性の強誘電体において,交流電場により駆動されるアクティブな状態を発見した(ニュースリリース)。

近年発見された強誘電性ネマチックは,固体にはない高い流動性・柔軟性を示す。多くの強誘電体が固体状態であるため,固体にはない特長を示す強誘電性ネマチックは新たな可能性を秘めた材料として注目されている。

強誘電性ネマチックを用いてコンデンサを構成したときのキャパシタンス(静電容量)は非常に大きく,その他に自発的キラル分掌,大きな非線形光学効果などが報告されており,これらの物性にも注目が集まっている。また,前例のない物質状態であることから,応用の可能性が検討されている一方,新規物理現象発現のためのプラットフォームとして,活発に基礎科学研究が行なわれている。

研究グループは,これまでに,強誘電性ネマチックを用いて,光による誘電率制御とこれを利用した光コンデンサ,ヘリ分極構造による高速光変調など,新たな応用機能を実現し報告している。また他方,電場印加下の液晶の新しい非平衡物理現象として,動的ソリトンの伝搬や,トポロジカル欠陥配列シート構造の形成などを発見している。

今回,研究グループは,強誘電性ネマチックを用いてミクロンサイズの鼓状の液晶滴(ドロップレット)を作成し,そこへ交流の電気刺激を与えることで,ドロップレットが基板上を並進運動や回転など,通常の液晶では見られない複雑な動きを示すことを発見した。

このとき,ドロップレット周囲には繊毛のような構造が生え,その動きはあたかも生物が這い回るかのように見えた。この状態は,電歪効果や圧電効果の競合した非平衡状態にあり,印加する電界の周波数や強度によりドロップレットは形態を変え,動きも変化する。個々のドロップレットはいわば自己駆動するマイクロロボットのようであることから,強誘電性(Ferroelectric)のロボット(Robot)から,Febotと名付けた。

研究グループは,この研究成果は,極性構造と弾性,流動性が混在した物質系の示す全く新しい複雑現象であり,機能物質科学およびソフトマター科学の開拓に貢献すると期待できるとしている。

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