【解説】防衛装備庁58品目から読む「防衛×フォトニクス」の現在地

防衛装備庁が2026年5月20日に公表した「プロジェクト管理対象装備品等の現状について」は、日本の防衛装備品の取得状況を示す資料である。同資料では、2026年3月時点でプロジェクト管理対象に選定されている58品目について、2025年度に行った分析・評価結果などが整理された(参照)。内訳は重点対象装備品43品目、準重点対象装備品15品目で、対象には誘導弾、無人機、衛星システム、宇宙状況監視、戦闘機、レーダなどが並ぶ。

この資料は防衛装備の進捗やコストを確認するための行政資料だが、フォトニクス産業の視点から見ると別の読み方もできる。装備品名だけから個別の搭載技術を断定することはできないものの、赤外線センサー、レーザー、光通信、光学追尾、撮像素子、画像処理など、広義の光技術が関わる余地のある分野が多く含まれているためだ。

かつて防衛装備における「光学」と言えば、双眼鏡や照準器を思い浮かべる向きも多かった。しかし現在の防衛分野でフォトニクスが担う役割は、「見る」ことにとどまらない。探知、計測、識別、誘導、通信、妨害といった機能を支える基盤技術として、光技術の重要性は高まっている。

特に注目されるのが、各種誘導弾や極超音速兵器、無人機、宇宙関連システムである。公表資料には「12式地対艦誘導弾能力向上型」「極超音速誘導弾」「次期中距離空対空誘導弾」「MQ-9Bシーガーディアン」「グローバルホーク」「SDA衛星システム」「宇宙状況監視システム」などが含まれている。こうした装備では、目標を捉えるセンサー、取得した情報を処理する画像・信号処理技術、過酷な環境で機能する光学材料や検出器が、性能を左右する要素になり得る。

これは単なる軍事技術の話ではない。赤外線イメージセンサーは、自動運転、インフラ監視、設備診断、防災用途でも需要が拡大している。衛星光学技術や宇宙状況監視技術は、気候観測、災害監視、商業宇宙ビジネスとも技術基盤を共有する。さらに、レーザー通信や光電融合技術は、次世代データセンターやBeyond 5G/6Gとも接続する。

いわゆるデュアルユース技術の領域になる。近年、防衛と民生の技術的な境界は、無人機、宇宙、AI、量子、フォトニクスといった分野で曖昧になっている。防衛装備庁の資料に並ぶ装備品を見ても、単体の装備というより、センサー、通信、情報処理を組み合わせたネットワーク型システムが目立つ。どれだけ高性能なセンサーを搭載し、得られた情報をいかに速く、正確に扱えるかが、装備全体の価値を左右する時代になっている。

もう一つ見落とせないのは、プロジェクト管理の観点だ。防衛装備庁は、取得戦略計画や取得計画に基づき、ライフサイクルコスト、スケジュール、リスクなどを確認しながら対象装備品を管理している。これは、装備品を一度開発して終わりにするのではなく、長期にわたり維持・更新していくための産業基盤が問われていることを意味する。

フォトニクス産業に引き寄せて考えれば、長期供給が可能な国内サプライチェーン、国産化可能な光学部材、安定調達できるセンサー技術、高信頼性の製造基盤が重要になる。半導体不足や地政学リスクが顕在化する中で、光学ガラス、赤外材料、レーザー部材、化合物半導体、イメージセンサーなどを国内でどこまで維持できるかは、安全保障だけでなく産業政策の課題にもなっている。

もちろん、防衛と民生の接近には慎重な議論も必要だ。研究者コミュニティや企業の中には、軍事応用との距離感を重視する声もある。一方で、海外では防衛研究開発やデュアルユース技術への投資が拡大しており、フォトニクスもその対象に含まれている。日本の光技術産業がどの領域に関与し、どこに線を引くのかは、今後さらに問われることになる。

今回の防衛装備庁資料は、単なる装備リストではない。防衛装備の高度化が、センサー、光通信、画像処理、光学材料といったフォトニクス技術に支えられていることを示す手がかりでもある。日本のフォトニクス産業にとって、防衛分野は避けて通れない論点になりつつある。

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