東京大学の研究グループは、光強度とひずみを1つの素子で検出できるフレキシブルマルチモーダルセンサーを開発した(ニュースリリース)。

有機半導体は、軽量で柔軟性に優れ、溶液プロセスによる大面積製造が可能であることから、曲げられるフレキシブルエレクトロニクスや、伸縮可能なストレッチャブルエレクトロニクスの基幹材料として注目されている。特に、人の皮膚に密着して生体情報を取得するヘルスケアセンサーや、ロボットの表面に貼り付ける電子人工皮膚の開発において、伸縮可能な有機光検出器(OPD)の需要が高まっている。
しかし、従来の伸縮可能なOPDは、引き伸ばされるとセンサーの受光位置が対象物に対して相対的に移動するため、空間分解能が低下したり、イメージセンサーとして使用した際に取得画像が不均一にゆがんだりするという課題があった。このゆがみを補正するには、センサーの伸縮量を検出し、画素の位置ずれを正確に推定する必要がある。従来は、外付けのひずみセンサーを別途集積する必要があったという。
研究グループは、OPDと伸縮性基板を組み合わせ、規則的なしわ構造をOPDに形成することで、光強度とひずみを単一の素子で計測できるフレキシブルマルチモーダルセンサーを開発した。

開発したセンサーは、あらかじめ引き伸ばした伸縮性基板上に、厚さ数μmの極薄OPDを貼り付けた後、基板の引き伸ばしを解除することで、OPDにしわ構造を形成している。従来の製造手法では、しわの形状が不均一になるため、伸縮を繰り返すと応力が局所的に集中し、センサーに求められる機械的耐久性を確保することが難しかった。
今回、研究グループは、伸縮性基板の表面に微細な凹凸パターンをあらかじめ形成し、その上にOPDを転写することで、しわの幅と高さを制御した構造を実現した。この構造によって、伸縮時の応力をデバイス全体に均一に分散させ、センサー応用に必要な機械的耐久性を確保した。さらに、センサーの短絡電流ISCと開放電圧VOCを計測することで、光強度とひずみ量を同時に推定できることを確認した。
開放電圧は光強度のみに依存し、素子の形状やひずみの影響を受けない。一方、短絡電流は光強度に加え、光が照射されている素子の有効受光面積にも比例する。デバイスを伸長すると、OPDのしわ構造が徐々に平坦化し、有効受光面積が増加するため、短絡電流も増加する。この2つの電気特性を組み合わせることで、光強度とひずみを個別に算出できる。開発したセンサーでは、光強度を1W/m²、ひずみを5%の分解能で同時に推定することに成功した。

今回開発したセンサーは、単一の素子で光量とひずみを同時に検出できる。研究グループは、センサーを2次元アレイ状に配置することで、伸縮による画像のゆがみを補正できるストレッチャブルイメージセンサーや、電子人工皮膚への応用が期待されるとしている。



