大阪大学の研究グループは、近赤外光を利用し、腎臓の細胞障害を非侵襲的かつ定量的に評価するイメージング手法を確立した。薬剤や遺伝子改変を用いず、障害を受けた腎臓が発する自家蛍光を検出することで、腎障害の程度をリアルタイムに評価できる可能性を示した(ニュースリリース)。

腎臓内部の細胞障害を詳しく調べる方法としては、腎臓に針を刺して組織を採取する腎生検が用いられている。しかし、患者への負担があり、繰り返し検査することが難しい。また血液や尿による検査では臓器全体の状態を評価することはできるものの、障害が生じている場所を直接把握することには限界がある。
研究グループは、生体組織を比較的透過しやすい近赤外光に着目。マウスに近赤外光を照射して腎臓の尿細管細胞から生じる自家蛍光を調べたところ、健常な細胞では蛍光が弱い一方、障害を受けた細胞では強い蛍光が観察された。実験では710nmの光で励起し、810~875nmの波長域の蛍光を検出した。この関係は3種類の腎障害モデルに加え、ヒト由来の検体でも確認されたという。
さらに研究グループは、この自家蛍光の主な由来が、ヘム合成過程で生じる「コプロポルフィリンIII」であることを突き止めた。腎障害によってミトコンドリアの機能が低下すると酸化ストレスが増大し、ヘム合成に関係する酵素CPOXの発現が低下。その結果、コプロポルフィリンIIIが蓄積して近赤外領域の自家蛍光が増えるという仕組みを明らかにした。
また、薬剤による治療を行なった腎障害モデルでは、病理所見の改善に伴って自家蛍光シグナルが低下することも確認した。腎障害の有無だけでなく、治療効果を光学的に追跡する手段として利用できる可能性がある。
一方、ヒトの腎臓は体表から深い位置にあるため、体外から近赤外光を照射してそのまま診断するには課題が残る。研究グループでは今後、光学プローブを備えたカテーテルや内視鏡などと組み合わせることで、腎移植を含む手術時の腎障害評価や、腎疾患の経過観察などへの応用が期待できるとしている。



