阪大など、藻類の新たな光利用の仕組みをクライオ電子顕微鏡で解明

著者: 編集部

大阪大学、大阪公立大学、チェコ  南ボヘミア大学、伊 ピサ大学は、クライオ電子顕微鏡法により真正眼点藻Trachydiscus minutusの光合成アンテナrVCPの立体構造を2.4Åの高分解能で解明した(ニュースリリース)。

(図)湖に住むこの単細胞藻は、光合成アンテナの中に巨大なクロロフィルの集合体を配置することで、近赤外光を光合成に利用している(イメージ)

森林や水圏環境の一部では可視光が乏しく近赤外光が主要となる環境が存在する。そういった環境では、光合成生物が特殊な仕組みで近赤外光を利用している。真正眼点藻の一種であるTrachydiscus minutusは、近赤外光を吸収できる光合成アンテナ複合体rVCPを持ちながら、Chl aだけで近赤外光利用を実現する希少な生物。しかし、その立体構造が明らかでないため、近赤外光吸収の発現メカニズムは長らく解き明かされていなかった。

研究グループは、クライオ電子顕微鏡法を用いて、rVCPの立体構造や色素配置を高分解能(2.4Å分解能)で決定することに成功した。その立体構造はこれまでに確認されたことのないヘテロ二量体が二つ結合した四量体構造を形成しており、その立体構造の形成によりChl a分子が大きなクラスターを形成していることを明らかにした。

加えて、この立体構造を基に量子化学計算を用いてこれらの分子配置からどのように近赤外光の吸収が生み出されるかを調べた。その結果、ヘテロ二量体内の三ヶ所のクロロフィルクラスターが特に近赤外光吸収に寄与していることが明らかとなった。

これまでに光合成アンテナとして報告されてきたChl a分子のみによる近赤外光の吸収の分子機構は全て、Chl aクラスター内の電荷移動が鍵となっていたが、今回の複合体では電荷移動の影響を含めず、クラスター間のエネルギーの非局在化の効果のみによって近赤外光の吸収が生じていることが明らかになった。

このようにタンパク質の立体構造解析と量子化学計算の組み合わせにより、藻類の近赤外光の吸収機構というユニークな分子機構の解明を大幅に進めることに成功した。

研究グループは、これらの構造的特徴は、今後の光合成タンパク質の機能設計や構造デザインに重要な基盤となると期待されるとしている。

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