大阪公立大学の研究グループは、昆虫の中でも特に多くのオプシン遺伝子を持つトンボに着目し、トンボの赤色視を担うオプシンを同定し、その一部を人工的に改変して解析した結果、トンボの赤オプシンが赤色光を感知する仕組みは、ヒトを含む哺乳類の赤オプシンと共通していることが明らかにした(ニュースリリース)。

赤色視は、ヒトを含む脊椎動物だけでなく一部の昆虫にも存在する。この赤色視を担う赤オプシンは、脊椎動物と無脊椎動物で独立に進化してきたことが知られている。しかし、無脊椎動物における仕組みは技術的な難しさから十分に解明されていなかった。
研究グループは、トンボが持つ多数のオプシンの中から、赤色視を担うオプシンを同定した。そして、このトンボの赤オプシンの一部を人工的に改変し、感知する色がどのように変化するかを調べる実験を行ない、トンボの赤オプシンの赤色光を感知するための鍵となるアミノ酸を突き止めた。
その結果、驚くべきことにトンボの赤オプシンが赤色光を感知する仕組みは、ヒトを含む哺乳類の赤オプシンと共通していることが明らかになった。これは遠く離れた生物の系統で独立に同じ進化、すなわち並行進化が起きたという予想外の結果。
さらに、トンボの中でも特にサナエトンボ科の赤オプシンは、ヒトが見える赤よりも、より長い波長の光、すなわちヒトには見えない近赤外光を感知することを発見した。そこでサナエトンボ科に特有の近赤外視が、トンボの生活においてどのような役割を果たしているかを理解するため、サナエトンボ科のトンボを野外で捕獲し、その体色の見え方を調べた。
その結果、オスとメスでは赤色から近赤外を含む光の反射率に大きな違いがあることが分かった。このことから近赤外光を感知できることがオス・メスの識別に有利に働いている可能性が示唆された。
また、この近赤外オプシンのさらなる長波長化にも挑戦した。近年、光作動性の分子を遺伝学的に導入し光スイッチとして用いることで、生理応答を光で操作する光遺伝学が大きく発展し、生命科学や脳科学の研究にブレークスルーをもたらした。
近赤外光は、生体組織への透過性が高くて生体深部にも届きやすいため、近赤外光に応答できるツールの開発は長年待ち望まれてきた。今回の研究では、サナエトンボ科のトンボの赤オプシンに、同じく赤色視を持つシャコのオプシンを参考にした改良を加えることで、感受性をさらに長波長化させることに成功した。
また実際に、この改良型トンボ近赤外オプシンが近赤外光によって細胞応答を引き起こすことを示した。今回の研究成果は、生体深部で機能する有望な光遺伝学ツールのポテンシャルを示している。
研究グループは、今回の研究成果は、生体深部で機能する新たな光遺伝学ツールとなる可能性を示しており、生命科学や脳科学への応用が期待されるとしている。



