大阪大学とartienceは、人の目に見えない近赤外光を利用して発電できる無色透明な有機太陽電池(OSC)の開発に成功した(ニュースリリース)。

太陽電池の導入拡大に向けては、建物や自動車の窓、農業用ハウスなど、身近な空間を発電場所として活用することが重要となっている。現在主流のシリコン太陽電池や次世代のペロブスカイト太陽電池は高い発電性能を示すが、太陽光を選択的に利用して発電することは容易ではない。
このような背景から、軽量・柔軟で、有機半導体の設計で太陽光の波長を制御できるOSCが注目されている。一方で、従来のOSCは、主に可視光を吸収して発電するため、透過・反射する光の色のバランスに変化が生じ、着色して見える。そのため、採光性や意匠性が求められる場所への応用には課題があった。そこで、目に見える可視光は透過し、目に見えない近赤外光を利用して発電する、「無色透明性」と「発電機能」を両立した新しいOSCの開発が求められていた。
研究グループはこれまでに、有機半導体材料の構造と電子状態を精密に制御することで、可視光をほとんど吸収せず、近赤外光を選択的に吸収する分子設計指針を見出してきた。この研究では、この設計指針をもとに、強い分子内相互作用を誘起する新規ユニットを設計し、これを分子内に組み込むことで、可視光を透過しながら近赤外光を吸収する新しい材料を開発した。この薄膜は、近赤外光を効率よく吸収する一方で、高い可視光透過性を示し、肉眼ではほぼ無色透明に見えることがわかった。

また、開発した分子は、近赤外光を吸収した後に電荷を生じやすく、さらに生じた電荷が効率よく薄膜内を輸送できることを明らかにした。その結果、この分子を発電層に組み込んだ太陽電池は、高い可視光透明性を保ったまま動作し、近赤外光領域で最大20%を超える外部量子効率を示した。
この成果は、従来の太陽電池では設置の難しかった場所に、景観・視認性・採光性を損なうことなく発電機能を付与する技術につながる。また、近赤外光の一部を吸収して発電に利用できるため、遮熱効果や空調に必要な電力消費の低減も期待されるという。さらに今回の研究では、開発した無色透明な有機光電変換デバイスにより、近赤外光を用いた脈拍検出にも成功。これにより、目立たず装着できるヘルスケア用ウェアラブル端末や、環境光で駆動する自己電力供給型センサーへの展開も期待されるとしている。



