理化学研究所(理研)の研究チームは、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」において、複数の電子ビームの塊(バンチ)を連続して加速する「マルチバンチ構造」の電子ビームを生成し、マルチバンチ構造のXFEL光を発生させることに初めて成功した(ニュースリリース)。XFELを用いた新たな利用実験や、ビームライン当たりのパルス繰り返し数の増強につながる成果として期待される。
XFELは、高速で移動する電子ビームから発生させる極めて高輝度なX線レーザーである。SACLAでは、通常、一つの高周波パルスに一つの電子ビームバンチを入射して加速し、シングルバンチ構造のXFEL光を発生させている。一方、加速器自体は一つの高周波パルスで複数の電子ビームバンチを加速できる設計となっていたが、複数の電子ビームバンチを安定して生成する技術が課題となっていた。
研究チームは今回、電子銃で発生させた電子ビームを任意の時間構造に加工できる新たなビームチョッパー装置を開発した。広帯域高周波アンプを利用した高速パルス電源を採用することで、電子ビームを安定して切り出し、複数のバンチを生成できるようにした。
まず電子源開発用の試験施設で実験を行い、最大8個の電子ビームバンチを生成できることを確認した。また、時間幅1nsの二つの電子バンチについて、バンチ内部で安定したビーム特性が得られていることも確認した。

続いて、このビームチョッパー装置をSACLAに実装した。8.4ns間隔の二つの電子ビームバンチを一つの高周波パルスで加速し、アンジュレータ装置に入射した結果、1バンチ当たり0.5mJ、合計1mJのパルスエネルギーを持つマルチバンチ構造のXFEL光の発生に成功した。

今回の技術により、一度に複数のXFEL光バンチを照射する実験や、多量のX線光子を必要とする実験への応用が期待される。また、電子ビームバンチを高速で複数のビームラインに振り分けることで、各ビームラインに供給するXFEL光の単位時間当たりのパルス数を増やせる可能性もある。

さらに、開発した高速パルス電源は、加速器におけるバンチごとの軌道補正に加え、光学レーザーの高速強度変調や偏光スイッチングなどへの応用も見込まれている。




