NTTは、サブテラヘルツ帯を用い、100mの距離で毎秒2テラビット(2Tb/s)の大容量無線伝送に成功した(ニュースリリース)。同社によると、ミリ波・サブテラヘルツ帯の無線伝送として世界最高速になるという。

生成AIの普及などを背景に、データセンタ内外でやり取りされるデータ量は急速に増加している。基地局ネットワークでも、6Gに向けて通信容量のさらなる拡大が求められており、光ファイバーに加えて、大容量かつ柔軟に構築できる無線通信技術への期待が高まっている。特に100GHzを超えるサブテラヘルツ帯は、広い周波数帯域を利用できることから、大容量無線通信への活用が期待されている。一方で、周波数が高くなるほど電波が減衰しやすく、長距離伝送が難しい。また、多数のアンテナを用いるMIMOでは、受信した信号を分離するためのデジタル信号処理が複雑となり、消費電力や処理遅延が増えることも課題となっていた。
今回同社は、電波の軌道角運動量(OAM)を利用した「OAM-MIMO多重伝送方式」を用い、大容量化と100mの長距離伝送を両立した。OAM波は、位相が伝搬方向に対して螺旋状に変化する性質を持つ。異なるOAMモードを利用することで、同じ周波数帯域内に複数の信号を重ねて送ることができる。同社は、OAMモードの多重化と分離の大部分をアナログ導波回路で処理し、デジタル信号処理を必要な部分に限定する構成を採用した。これにより、8素子×2リングのアンテナ構成では、フルデジタル方式と比較してデジタル演算負荷を数百分の一まで低減できるとしている。
さらに、複数のOAMモードを生成・分離する「Multi-UCA型Butler matrix導波回路」、反射鏡を利用してアンテナ利得を高める「イメージングリフレクタ」、送受信アンテナの方向ずれを補正する「軸ずれ補正技術」を開発した。実験では136.0~148.5GHzと151.5~164.0GHzの周波数帯を使用。8種類のOAMモードに加え、モード内多重と水平・垂直の偏波多重を組み合わせ、最大22の空間多重を実現した。その結果、100mの距離で最大2.04Tb/sの無線伝送に成功した。
同社は今回の技術について、AIデータセンタ内やデータセンタ間、ビル間を結ぶ通信のほか、6G基地局のバックホールやフロントホールへの応用を想定している。光ファイバーの敷設が難しい場所でも、大容量回線を比較的柔軟に構築できるため、イベント会場や災害時の臨時通信回線などへの展開も考えられる。今後は、多地点への同時接続などに対応する技術開発を進めるとともに、さらなる大容量化を図る。将来的には10Tb/s級の無線伝送を目指し、IOWNや6G時代の大容量ネットワークを支える新たな通信手段としての実用化を進めるとしている。



