早大と岡山大、テラヘルツバイオフォトニクス実用化に向けた技術ロードマップを提示

早稲田大学、岡山大学は、テラヘルツバイオフォトニクス研究の歴史と最新技術を整理し、分野の発展を妨げてきた本質的課題を体系的に分析した。さらに、顕微鏡技術や高感度センサーなどの新しい研究動向を整理し、医療・バイオ計測への応用に向けた技術ロードマップを提示した(ニュースリリース)。

テラヘルツ波は、分子間相互作用や水素結合、水和状態といった生体の状態を反映する物理情報に敏感に反応する電磁波であり、2000年代以降、がん組織やDNA、タンパク質などの解析を目指した研究が世界的に進められてきた。しかし、従来の技術では空間分解能の低さや水による吸収に伴う感度低下、計測速度の遅延、そして装置の大型化といった本質的な課題があり、実用化は可視光などの光学技術に比べて遅れていた。また、観測された信号が病気特有のものか、あるいは単なる水分量の違いによるものかという解釈の難しさもあり、これまでの研究の多くは「測定できる」ことを示す段階に留まっていた。

こうした停滞要因を克服するため、近年の研究では技術進展の体系化が進められており、例えばテラヘルツ時間領域分光法を用いることで、生体の水和状態を定量的に評価し、信号解釈の信頼性を向上させることが可能になっている。さらに、テラヘルツ顕微鏡技術の向上によって細胞や分子レベルでの観察が現実味を帯びているほか、テラヘルツメタマテリアルを活用して電場を局所的に集中させることで、微量な生体物質を高感度で検出するバイオ分析チップへの応用も期待されている。特に、著者らが開発しているテラヘルツ点光源顕微鏡は、分解能、感度、速度、装置サイズの4つの課題を同時に解決する鍵として、細胞レベルの生体計測における有用性が示されている。

このような技術革新により、テラヘルツバイオフォトニクスは単なる検証段階から実用化のフェーズへと移行しつつある。非侵襲かつラベルフリーで情報を取得できる強みを活かし、皮膚がんの診断や創傷評価といった医療分野での社会実装に向けた具体的なシナリオが提示されている。今後は医療分野に留まらず、創薬や食品、環境、半導体といった幅広いバイオ産業への波及が見込まれており、物理学や医学などが交差する学際的な領域として、新たな研究コミュニティの形成や産学連携の加速が期待されている。

テラヘルツバイオフォトニクスは大きな可能性を持つ一方で、依然としていくつかの課題が残されている。特に、生体内でのテラヘルツ信号の起源をより正確に理解すること、計測装置の小型化・高速化・低コスト化を進めることなどが重要。今後は、顕微鏡技術やセンサー技術のさらなる発展に加え、AIによるデータ解析や医療機関との連携を進めることで、実際の医療現場への応用が期待されるという。また、近年急速に発展しているナノフォトニクスやメタマテリアル技術との融合により、これまでにない高感度な生体計測技術が生まれる可能性があるとしている。

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