大阪公立大学の研究グループは、光をナノメートルスケールに閉じ込めて伝搬する「表面プラズモンポラリトン(SPP)」を可視化する新しい手法を開発した(ニュースリリース)。

近年、AIやデータ通信の発展に伴い、より高速で低消費電力な情報処理技術が求められている。その有力な候補として注目されているのが、光と物質の相互作用を利用した情報通信技術である。SPPは、金属表面に存在する自由電子の集団振動と光が結合した量子状態。SPPは光のエネルギー(情報)をナノメートルスケールという非常に小さな領域に閉じ込めながら伝搬できるため、従来の光デバイスよりも高密度な光回路や超小型光デバイスの実現につながると期待されている。しかし、SPPは金属表面や金属と誘電体の界面近傍に局在し、光を発することなく伝搬するため、その様子を直接観察することは容易ではない。特に実際のデバイスで用いられる誘電体保護膜や機能性材料に埋もれた内部界面を観察することは困難であった。
そこで研究グループは、量子ドット薄膜を利用することで、通常の光学顕微鏡による簡便かつ高精度なSPP可視化手法の開発に取り組みました。この研究では、金薄膜に微細な溝を加工した試料の表面に誘電体薄膜を形成し、その上に量子ドットを1層ずつ積み重ねるLayer-by-layer法を用いて、均一な量子ドット薄膜を作製した。この手法によって均一で構造がよく制御された量子ドット薄膜を形成できるため、SPPを高感度に可視化するとともに、その波動特性を定量的に評価することが可能になる。近赤外フェムト秒パルスレーザーを照射すると、溝構造から励起されたSPPによって量子ドットから2光子蛍光が発生する。その蛍光を顕微鏡で観測することで、SPPの伝搬に対応した縞模様を画像として取得することに成功した。
さらに、誘電体膜の厚さを変えながら観測を行なった結果、100nmを超える誘電体膜に埋もれた内部界面を伝搬するSPPも可視化できることを実証した。得られた縞模様を解析することで、SPPの波長、分散関係、位相速度および群速度を高精度に評価できることを明らかにした。また、ポンプ・プローブ法を組み合わせた時間分解イメージングにより、誘電体膜に埋もれた界面において、フェムト秒スケールで伝搬するSPP波束の動きをリアルタイムで観測することにも成功した。
今回開発した手法は、光学顕微鏡を利用して金属と誘電体薄膜に埋もれた界面を伝搬するSPPを直接観測できるため、従来よりも簡便にプラズモニクスデバイスの評価を行なうことができる。今後は、光通信デバイス、光センサー、太陽電池、ナノ光回路などの研究開発への応用が期待されるという。また、量子ドットなどの機能性ナノ材料とSPPの相互作用を直接観察できるため、新しい光機能材料の開発への貢献も期待できるとしている。さらに、超高速時間分解観測を活用することで、光と物質が相互作用する瞬間の現象を詳細に解明できるようになり、次世代の超高速光デバイス設計指針の確立につながることが期待されるとしている。



