矢野経済研究所は、国内外の高機能フィルム市場に関する調査結果を発表した(ニュースリリース)。中国政府による国産化振興政策「Buy China」の進展を背景に、ディスプレイや電子部品などの既存市場では中国メーカーの存在感が高まっており、日本メーカーのシェアは低下傾向にあるという。一方、日本勢では航空宇宙や半導体、水素関連など、新たな市場への展開を模索する動きが活発化している。
同調査では、ディスプレイ・光学、電気・電子、一般産業向けのベースフィルムおよび加工フィルムを対象に、日本、韓国、台湾を中心とした市場動向を分析した。対象にはPETフィルムやPIフィルム、MLCC離型フィルム、偏光板保護フィルム、ハイバリアフィルムなどが含まれる。
現在、高機能フィルム市場では中国メーカーへのシフトが幅広い分野で進んでいる。TVやスマートフォンなどの最終製品の組み立て拠点が中国に集中していることに加え、部材を選定する中国のセットメーカーが国産品の採用を拡大していることが背景にある。
中国メーカーの技術力向上も市場構造を変化させている。2010年代初頭には、LCDバックライト向け光拡散フィルムなど比較的製造難易度の低い製品から中国企業の参入が始まった。一方、集光・輝度向上フィルムやハイエンドTV向け部材は技術的な障壁が高く、中国製品への置き換えは難しいとみられていた。しかし、現地メーカーの技術開発やユーザー側の製品活用技術が進んだことで、現在では市場の多くが中国メーカーへ移行している。

国産化の対象となっているのは、MLCC離型フィルムや偏光板保護フィルム、グラファイトシート用PIフィルム、半導体ウエハーやチップの製造工程で使用されるBGテープ、DCテープなど、既に大規模な市場が形成されている製品が中心である。これらは需要量が大きく、日本のフィルムメーカーにとって設備稼働率や売上高を支える主要製品となってきた。

こうした市場環境の変化を受け、日本メーカーは既存市場で高性能・高品質化を追求するだけでなく、新市場の開拓に動き始めている。航空宇宙や半導体、水素関連など、これまでフィルムメーカーが十分に参入してこなかった領域で、新たな用途を探る取り組みが進んでいるという。
矢野経済研究所は、日本のフィルムメーカーを取り巻く競争環境について、既存の大型市場でシェアを争う段階から、まだ形成されていない次世代市場の需要をいかに獲得するかという段階へ移行していると分析する。
新規分野では、必要とされるフィルムの仕様や性能がまだ明確になっていないケースも多い。このため、ユーザーから提示された仕様を満たす従来型の開発だけではなく、製膜技術や材料開発技術などメーカー側が持つ技術シーズを起点に、フィルムへ機能を付与するコンバーターやユーザー企業と連携しながら用途そのものを作り出す共創型の開発が重要になるとしている。
同調査は2026年4月から7月にかけて、フィルムメーカーやコンバーターを対象に、直接面談や文献調査などによって実施した。



