分子科学研究所と大阪公立大学などの研究チームは、ナノメートルサイズの空間を伝わる光と物質が結びついた状態「ハイパボリックフォノンポラリトン(HPhP)」が、光照射によって高速に変化する様子を直接可視化することに成功した(ニュースリリース)。

HPhPは、赤外光と物質中の光学フォノンが強く結びついて形成される状態で、赤外光を通常の光の波長よりもはるかに小さな空間に閉じ込めることができるため、ナノスケールの光制御技術や高感度分光などへの応用に加え、その超高速制御は、将来の超高速ナノ光デバイスの実現に向けた基盤技術として期待されている。
一方、HPhPは光の周波数によって波長が大きく変化する強い分散を示す。そのため、広い周波数成分を含むフェムト秒赤外パルスを用いると、異なる波長のHPhPが同時に励起され、それらの信号が重なって平均化されるため、伝搬の様子を鮮明に観察できないという問題があった。
そこで今回の研究では、超高速赤外近接場光顕微鏡において、散乱光を回折格子で分光してから検出する方法を導入した。その結果、約150フェムト秒という高い時間分解能を維持したまま、HPhPの超高速制御を直接観測することが可能となった。
この新しい超高速ナノイメージング技術により、可視光パルスをWS2に照射して光キャリアを生成すると、それに伴って隣接するhBN中を伝搬するHPhPの電場振幅が、一時的に変化することを実空間で観測した。さらに、比較的厚いWS2とhBNからなる構造では、HPhPの波長が変化する様子も可視化した。
数値シミュレーションにより、観測されたHPhPの超高速変調が、光キャリアの生成に伴うWS2の過渡的な誘電率の変化によって説明できることを示した。今回の成果は、ナノスケールの光伝搬をフェムト秒の時間スケールで観測・制御する新たな基盤技術として、将来の超高速ナノフォトニクスへの展開が期待される。



