大阪公立大学の研究グループは、フェムト秒レーザーで5つの金属元素が均一に分布したハイエントロピー貴金属合金ナノ粒子の合成に成功した(ニュースリリース)。

特異な性質を示すナノ粒子は光学・磁気・触媒材料として非常に重要。複数の金属を混合した合金ナノ粒子の作製は、全く交じり合わない金属の組み合わせがあるため簡単ではない。しかし、従来の合金とは異なるアプローチで作られる、複数の金属をほぼ等量ずつ混合するハイエントロピー合金では、多様な組み合わせが可能になった。近年、ハイエントロピー合金ナノ粒子の作製法の提案が盛んに行なわれており、急速加熱・冷却により金属塩を混合する方法、高温下で複数の金属塩を同時に還元・析出する方法、合金試料にレーザーを照射する液中レーザーアブレーション法などがある。
さまざまな作製法のうち、複数の金属イオンを均一に混合・析出させるには課題がある。金属が電子を放出すると陽イオンとなり、そのなりやすさ(酸化されやすさ)はイオン化傾向として表される。一方、陽イオンが電子を受け取って金属になりやすい(還元されやすい)順番は、イオン化傾向とは逆になる。このように、金属イオンの種類によって還元されやすさが異なるため、最も還元されやすいイオンから金属として析出する。そのため、複数の金属イオンから均一に合金を作るのは極めて困難。非常に強力な化学還元剤を使う方法もありますが、試薬が劇物であるなどの問題があった。
今回の研究では、特別な試薬を用いず水から強力な還元剤を発生させることで、室温で複数の金属イオンを同時に還元・析出させる合成手法を試みた。近赤外フェムト秒レーザーを水に照射すると、フィラメントというごく狭い領域に最も強力な還元剤である電子が高密度に生成される。電子は寿命が短く、最終的に水から生じるのは酸素、水素、過酸化水素のみであるため化学的な危険性は低いと考えられる。
この手法を用い、貴金属元素であるロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)イオンの混合水溶液にレーザーを照射したところ、各元素が粒子内に均一に分布した、直径約10ナノメートルのハイエントロピー貴金属合金ナノ粒子が得られた。さらに、暗下での自発的な反応がほとんど起こらないこと、水和電子と同時に発生する強力な酸化剤であるヒドロキシラジカルを捕捉すると反応が加速すること、加えて、分散剤によりナノ粒子の粒径を揃えることができ、ナノ粒子が1か月以上水に分散した状態を保てることも明らかにした。これらの結果から、レーザーによる複数金属イオンの同時還元・析出法は、イオン化傾向にもとづく単純な反応を速度的に凌駕するだけでなく、粒径や分散状態も制御できることが示された。
今後は、用途に応じた機能を発揮させるため、構成元素の数を増やすだけでなく、元素の割合、粒子の大きさを制御する必要がある。さらには、特定の元素を、特定の部位に、特定の割合で偏在させる手法の開発が望まれている。





