慶應義塾大学と国立天文台の研究グループは、アルマ望遠鏡で取得された天の川銀河中心核「Sgr A*」からの電波強度データを解析し、約30分および約50分の時間スケールを持つ光度変動構造を発見した(ニュースリリース)。
この研究は、Sgr Aにおける周期的変動がどのように発生するのかという謎の解明を目指したもの。2000 年初頭には、Sgr Aのフレアに伴う準周期的変動(QPO)が初めて報告され、その発生メカニズムとして、ホットスポットをはじめとする様々なモデルが提唱されていた。さらに2018年には、赤外線観測によってSgr A*周囲を公転するホットスポットが実際に観測され、2025年にはミリ波帯において顕著な周期的振動が報告された。これらの先行研究を受け、この研究では、ミリ波帯の時間変動とホットスポット運動との関係を調べ、その起源を探ることを目的とした。
研究グループは、アルマ望遠鏡が観測した天の川銀河中心核「Sgr A*」の公開データを詳細に解析した。その結果、約30分および約50分という特徴的な時間スケールを持つ光度変動構造を検出した。この変動は、超巨大ブラックホール周囲を2つの「ホットスポット(加熱されたガスの塊)」がエネルギーを徐々に失いながら公転することで生じている可能性がある。一方で、こうした特徴的な変動が確認されたのは一部の観測データに限られており、いつでも常に現れるわけではないことも明らかになった。
これらの結果は、超巨大ブラックホールの光度変動が、複数のホットスポットの回転と、それらの発生・減衰・消滅の一連のプロセスによって引き起こされている可能性を示唆している。従来、ブラックホールの光度変動については、周期的変動と不規則(ランダム)的変動とで、別々の原因があると考えられてきた。しかし、今回の研究は、それら両方の結果をひとつのホットスポットモデルによって統一的に解釈できる可能性を、初めて観測データによって示した。本成果は、ブラックホール近傍の物理環境を理解するための重要な手がかりであり、将来のさらなる高精度観測と組み合わせることで、ブラックホール周囲の構造をより詳しく解明できると期待されるという。

現された光度曲線(下段)。
この研究は、天の川銀河中心ブラックホール Sgr A* におけるミリ波光度変動が、複数のホットスポットの運動によって説明できる可能性を示した。一方で、ホットスポットがどのように生まれ、進化し、消滅していくのかという詳細なメカニズムについては未解明な点が多く残されている。今後は、アルマ望遠鏡による長時間かつ高頻度モニタリング観測に加え、X線や近赤外線といった異なる波長での同時観測を組み合わせることで、ブラックホール近傍で起きている短時間変動の物理的起源をより詳しく解明できると期待されるとしている。



