富山大学の研究グループは、高い電荷輸送特性を持つ有機半導体材料「ルブレン」を用い、実用的な有機発光ダイオード(OLED)の薄膜積層構造を維持したまま、発光層を高度に結晶化させる新技術を開発した(ニュースリリース)。
現在の商業用有機ELの多くは、真空蒸着時に分子がバラバラに積み重なるアモルファス薄膜を利用している。しかし、アモルファス薄膜は分子配列の乱れにより、材料が本来持つ性能を十分に引き出せないという課題があった。分子が規則正しく配列した有機単結晶は優れた電気特性を示すが、作製には特殊な基板が必要なため、薄膜積層型のデバイスに組み込むことは困難とされてきた。
研究グループは、透明電極付きガラス基板上にアモルファス材料「α-NPD」を下地層として成膜し、その上に厚さ50nmのルブレン薄膜を形成した。結晶化には、独自の「2段階熱処理プロセス」を採用している。ルブレン成膜直後の予熱処理で微小な結晶核を形成し、デバイス完成後に後熱処理(ポスト・アニーリング)を施すことで、結晶を穏やかに成長させる手法である。偏光顕微鏡による観察の結果、約1mmに達する巨大な結晶ドメインが25mm基板全体に形成されていることが確認された。
作製したデバイスは、0.38Vで電流が流れ始め、ディスプレイの輝度基準となる1cd/m²には1.33Vという極めて低い電圧で到達した。また、アモルファス素子では幅広い波長域で発光したのに対し、結晶化した素子では発光スペクトルの先鋭化(単一の遷移双極子モーメントに由来する純粋な発光)が確認された。

この研究成果は、シリコン半導体産業が構造の秩序性を制御することで発展したのと同様に、有機EL産業においてもアモルファスOLEDから「結晶OLED」へのパラダイムシフトを決定づけるものとされている。



