九州大など、世界初のイオン航跡場加速を実証 陽子を60MeVまで加速

九州大学、量子科学技術研究開発機構(QST)、大阪大学の研究グループは、高強度レーザーをフォーム標的に照射し、レーザーとともに進むプラズマの波の速度を制御することで、陽子を波に乗せて最大60MeVまで加速することに成功した。重いイオンを航跡場に捕捉して加速する「Bow-wake加速」を実験的に実証したのは世界初だという(ニュースリリース)。

高エネルギーイオン加速は、加速器科学のほか、医療、材料科学、基礎物理などへの応用が期待されている。一方、従来の加速器は高エネルギー化に伴って装置が大型化する課題がある。これに対し、プラズマ中にレーザーが生み出す強い電場「航跡場」を利用するレーザー加速は、小型・高性能な次世代加速器技術として注目されている。ただ、電子より重い陽子やイオンは、速く進む航跡場に捕捉されにくく、効率的な加速が難しかった。

研究グループは、QST関西光量子科学研究所の高強度レーザー「J-KAREN-P」を厚さ100µmのスポンジ状フォーム標的に照射。通常のガスターゲットより高密度のプラズマを形成し、レーザーとともに進む航跡場の位相速度を低下させることで、ほぼ静止した陽子でも波の先端に形成されるBow-wakeに捕捉される条件を実現した。

レーザーが高密度プラズマ中を進むと、前方の電子が押し集められ、局所的に強い電荷分離電場が形成される。研究グループは、この電場に陽子を捕捉し、航跡場との位相整合を保ちながら加速することで、最大60MeVの陽子を得た。

今回の成果は、宇宙空間で起こる高エネルギー粒子加速と共通する物理を実験室で再現したものでもあり、宇宙線の加速機構の解明にもつながるとしている。今後は、2つのレーザーを用いた二段階加速に取り組み、数100MeV級、さらに海外の高強度レーザー施設を利用してGeV級のイオン生成を目指す。将来的には多段式加速へ発展させ、コンパクトな次世代レーザー駆動イオン加速器の実現につなげたいとしている。

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