情報通信研究機構(NICT)を中心とした研究グループは、都市に敷設されている光ファイバーを用いて、毎秒450テラビットの大容量伝送の実証実験に成功し、既存光ファイバーでの伝送容量の世界記録を更新したと発表した(ニュースリリース)。

AIなどの新たなサービスの普及により、超大容量通信ネットワークに対する需要は急速に増大している。この需要に対応するため、光ファイバー通信に新しい波長帯を追加して、伝送容量を増加させるマルチバンド波長多重(WDM)技術の研究開発が進められている。この技術は、光ファイバーケーブルの新設が容易ではない都市などにおいて、既設の光通信インフラの伝送能力を最大限活用できる経済的な手法として注目されている。
これまでの研究では、O帯、E帯、S帯、C帯、L帯、U帯を含むマルチバンド波長多重光信号の伝送が実験室内に設置された光ファイバーで実証されてきたが、実際の運用環境下に敷設されている光ファイバーを用いたフィールド実証は行なわれていなかった。実際の運用環境下に敷設されている光ファイバーは、実験室の光ファイバーと比べて高い損失や不均一性が大きく、伝送条件が厳しくなる。そのため、フィールド実証は技術の実用化に向けて必要不可欠な評価プロセスである。

今回、NICTは国際共同研究グループと共同で、O帯、E帯、S帯、C帯、L帯に対応した光増幅器等を用いて、これまで報告された中で最も広帯域の光ファイバー伝送システムを開発した。広帯域WDM光信号は、O帯、E帯、S帯、C帯、L帯にわたって最大1,273個の波長チャネルを含み、周波数帯域幅は42.4テラヘルツである。この光信号は、偏波多重のQPSK、16QAM、64QAM、256QAM方式を用いることで高いデータレートを実現した。
今回のフィールド実証では、英国ロンドンの中心部に敷設されている、UCLのキャンパスとTelehouse Northデータセンター間を結ぶ19.5 kmの光ファイバーを用いた。この光ファイバーは、一般的な商用光通信システムで使われている光ファイバーと同じ規格のものだが、主に地下に敷設されている既設インフラであり、接続部の光コネクタ、過去の光ファイバー断線修復などによって実験室の光ファイバーよりも光損失が大きいなど、実際の運用環境を反映した条件となっている。
広帯域WDM光信号を光ファイバーで往復39km伝送した後、受信した光信号から理想的な誤り訂正符号の適用を仮定して得られたデータレート(一般化相互情報量)は毎秒450テラビットに達し、過去の成果を超えて、既存の光ファイバー伝送における世界記録を達成した。
この成果により、既設の光通信インフラにおいて、新規開拓波長帯を活用することで、大規模な設備投資や長期の導入期間を伴うことなく、伝送容量を大幅に拡張できる可能性が示された。さらに、実際の運用環境下の敷設光ファイバーにおけるフィールド実証の成功は、今後の実用化に向けて大きな前進となった。

研究グループは今後も、更なる周波数帯域の拡張や新しい伝送技術の開発を進め、超大容量・長距離伝送の実現を目指すという。また、この技術を既設の通信インフラへ適用することで、将来の通信需要に対応可能な次世代通信ネットワークの構築を目指すとしている。



