東海大、冷却装置なしで作動するカーボンナノチューブ熱電素子を開発

東海大学の研究グループは、単層カーボンナノチューブ(単層CNT)を用いた熱電素子において、薄膜を貼り付ける基板を替えるだけで、同じ素子を「電源」と「熱流センサー」として使い分けられることを明らかにした(ニュースリリース)。

従来の熱電素子は、熱を電気に変えるために素子の一方を高温、もう一方を低温に保つ必要があり、低温側を維持する冷却板やファンなどが必要だった。研究グループは今回、素子全体を一様に加熱するだけで作動する単層CNT薄膜素子を作製し、基板を3種類に替えて動作を比較した。

その結果、薄膜や回路、貼り付け方法が同じでも、基板の違いによって素子の機能が変化することを確認した。赤外線を45.8%透過するシクロオレフィンポリマー(COP)基板では、赤外線が基板を通過してCNT薄膜を直接加熱し、素子中央部が高温になることで、一定方向の電圧が持続して発生した。この場合、素子は電源として機能する。

一方、赤外線透過率が0.20%のポリエチレンナフタレート(PEN)基板では、基板が先に温まることで素子中央部が相対的に低温となり、COPの場合とは逆向きの電圧が発生した。この電圧は温度が変化している間だけ現れるため、熱流の変化を検出するセンサーとして利用できる。

(図)赤外線を通す基盤(左)と、吸収する基盤(右)に同じ薄膜を貼ったときの表面温度。

研究では、基板による赤外線の吸収・透過特性が電圧の向きを、基板の温まりにくさが電圧の大きさや持続時間を左右することも明らかにした。いずれの基板でも素子内部に1~3℃程度の温度差が自然に生じるため、従来のような冷却装置は不要となる。

外部電源や冷却装置を必要としないことから、配線が難しい設備の放熱監視や、EVのバッテリーパック、データセンター設備における異常発熱検知、曲面への貼り付け型センサーなどへの応用が期待される。

(図)作製した単層CNT p-n接合素子。薄く柔らかく、曲面に沿わせることができる。

現時点の出力電圧は0.38mV、出力電力は0.47nWで、実用化には出力向上が課題となる。今後は、性能向上に加え、封止技術による長期信頼性の確保や、加熱・冷却を繰り返す環境での評価を進めるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 東大、光強度とひずみを同時検出するフレキシブルセンサーを開発

    東京大学の研究グループは、光強度とひずみを1つの素子で検出できるフレキシブルマルチモーダルセンサーを開発した(ニュースリリース)。 有機半導体は、軽量で柔軟性に優れ、溶液プロセスによる大面積製造が可能であることから、曲げ…

    2026.07.22
  • スポーツの「1mm」が社会を変える 光技術が支えるサッカーW杯判定

    サッカーW杯の熱狂は、劇的なゴールや番狂わせだけで生まれるものではない。勝敗を分ける一瞬の判定に対し、観客や視聴者がどれだけ「納得できるか」が、世界最高峰の大会には不可欠である。その納得感を支えているのが、カメラ、センサ…

    2026.06.25
  • 阪大など、ナノダイヤモンドの高圧選別に成功 高感度センサーへの応用に期待 

    大阪大学、ダイセル、立命館大学は、欲しい波長で光るナノダイヤモンドだけを光の圧力(光圧)で選別することに初めて成功した(ニュースリリース)。 ダイヤモンドの色中心と呼ばれる構造が注目されている。これは透明なダイヤモンドに…

    2026.04.03
  • 東大生研ら,エレクトロニクス技術開発の部門を設置

    東京大学とダイセルは,東京大学生産技術研究所(東大生研)に「ダイセル人を繋ぐエレクトロニクス」寄付研究部門を設置した(ニュースリリース)。 今回設置する「ダイセル人を繋ぐエレクトロニクス」寄付研究部門では,人とエレクトロ…

    2025.10.09
  • 中央大,リモート制御型の透視イメージセンサを設計 

    中央大学の研究グループは,高純度に半導体質へ分離されたカーボンナノチューブ(CNT)により,透視なイメージセンサを設計した(ニュースリリース)。 モノづくりを支える基幹技術としてMMW–IRイメージセンサが注目を集める中…

    2025.07.28

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア