熊本県立大学は2026年9月1日、文部科学大臣から「半導体学部半導体学科」の設置認可を受けた(ニュースリリース)。2027年4月に開設し、1学年60人、教員16人体制で半導体分野の人材育成に取り組む。
「半導体学部」と聞けば、電子回路や半導体デバイス、製造プロセスを学ぶ場を想像するかもしれない。しかし、現在の半導体産業を支えている技術をたどっていくと、そのさまざまな場面で「光」が重要な役割を担っていることが分かる。

半導体を「作る」ために欠かせない光技術
代表的なのが半導体製造における露光技術である。回路パターンをウエハー上へ形成するリソグラフィーでは光が不可欠であり、微細化の進展に伴って使用する光の波長も短くなってきた。現在の最先端半導体ではEUV(極端紫外線)を利用した露光が用いられ、光源、光学系、マスク、計測技術など、高度なフォトニクス技術の集合体となっている。
光が使われるのは露光工程だけではない。ウエハー上に形成された微細パターンや欠陥を調べる検査装置、膜厚や寸法を測定する計測装置、製造装置内部の位置決めなどでも、レーザーや光学技術が広く活用されている。
半導体の回路寸法が微細になればなるほど、わずかな欠陥や寸法のずれが製品性能や歩留まりを左右する。そのため、「作る技術」と同時に「見る、測る技術」の重要性も高まっている。半導体産業の高度化は、光計測技術の高度化とも密接に結び付いているのである。
半導体そのものが「光を扱うデバイス」に
一方、半導体そのものが光を扱うデバイスとなる分野も広がっている。
半導体レーザーやLEDは電気エネルギーを光へ変換し、CMOSイメージセンサーやSPADは光を電気信号へ変換する。光通信では半導体レーザーや受光素子が使われ、自動運転やロボットではLiDARなどの光センシング技術が周囲の環境認識を担う。
さらに近年、AIやデータセンターの急拡大に伴って注目されているのが、シリコンフォトニクスや光電融合である。

半導体チップ間やチップ内部では大量のデータがやり取りされているが、電気配線による伝送には消費電力や帯域の面で限界がある。そこで情報伝送の一部を光に置き換え、高速化と低消費電力化を図ろうとする研究開発が進んでいる。
つまり、これから半導体を学ぶ人材にとって「光」は周辺技術ではなくなりつつある。
横断型人材に求められるフォトニクスの知識

熊本県立大学が新設する半導体学部でも、半導体の知識だけに限定せず、電子・材料物性、ナノテクノロジー、物性評価、計測、信頼性、半導体製造工程、製造装置などを体系的に学ぶ教育を掲げている。また、産学連携による実学教育を学部の特色の一つとしている。
こうした横断型教育が求められる背景には、現在の半導体産業が一つの専門分野だけでは成立しなくなっていることがある。
回路を設計する技術、材料を作る技術、微細加工する技術、欠陥を検査する技術、完成したデバイスを評価する技術。それぞれが高度化し、互いに密接につながっている。その中でフォトニクスは、製造、検査、センシング、通信という複数の領域を横断する基盤技術の一つとなっている。
熊本県立大学は、新学部で「半導体に関する知識と技術ならびに半導体に関わる様々な分野についての横断的な知識」を修得する人材の育成を掲げる。2026年3月には、文部科学省の大学・高専機能強化支援事業「成長分野転換枠」にも選定されており、次世代半導体技術を総合的に探究する教育・研究を進めるとしている。(編集部 林 諭子)





