2年前に半導体コロイド量子ドット1個を用いた単一電子トランジスタ(SET)を作製した東北大学と東北工業大学は、従来困難だった単一量子ドットの電気伝導の詳細な評価に成功するとともに、室温でのSET動作を初めて実現した(ニュースリリース)。

半導体コロイド量子ドットは、近年、太陽電池などの光電デバイスの活性層材料として有望視されており、溶液プロセスによる製造の容易さから、活発な研究が進められている。
光電デバイスへの応用に向けては、コロイド量子ドットの光学的・電気的性質の理解と制御が不可欠だが、これまで比較的評価が容易な光学的特性については詳細な研究が蓄積されてきた一方で、電気的特性、特に単一の極微小量子ドットにおける電子輸送やスピン状態の評価は技術的に困難であり、未解明の課題が数多く残されていた。
こうした量子ドット1個の電気的性質を評価・制御する手段として知られているのがSET。SETは量子ドット単体の電気的特性を明瞭に捉えることができるだけでなく、量子情報処理のキーデバイスとしても注目されている。
研究グループは2年前、PbSコロイド量子ドット1個を用いたSETを作製し、従来困難だった単一量子ドットの電気伝導の詳細な評価に成功するとともに、室温でのSET動作を初めて実現した。
今回の研究では、前回の成果をさらに発展させ、市販のInAsコロイド量子ドット溶液を用いてSET構造を作製した。ゲート電極として導電性シリコン基板を用い、量子ドット中の電子数を制御した。
低温での測定により、電子が1つずつ量子ドットを介して流れることを示す菱形構造が明瞭に観測され、素子がSETとして機能することを確認した。特にサイズ約6nmの量子ドットを用いたSETでは、電子間相互作用が室温の熱エネルギーを大きく上回るため、室温でもSETとして動作することが実証された。

さらに磁場中での特性変化を解析した結果、量子ドット内の同一軌道に形成されるスピンの向きが異なる2つの電子準位に対応する2つの伝導度ピークが、磁場により大きくシフトする様子を観測した。2つのピーク間隔は磁場に比例して増加し、ゼーマン効果による電子準位の分裂が明確に捉えられた。この振る舞いから導出された電子の磁場感度を表すg因子は15という非常に大きな値を示した。
研究グループは、この成果は、コロイド量子ドットの光電デバイスや量子情報デバイスへの応用に向けた重要な第一歩となったとしている。