北海道大学の研究グループは,危険な水素ガスや複雑な圧力制御を用いずに,電界効果移動度約90cm2 /V·sの高性能薄膜トランジスタの開発に成功した(ニュースリリース)。
近年,次世代ディスプレー用薄膜トランジスタとして,水素を添加した酸化インジウム薄膜を活性層とする高性能素子が注目されている。水素添加酸化インジウム薄膜トランジスタは,現在のディスプレーに使用されている酸化インジウム・ガリウム・亜鉛(IGZO)を活性層とする薄膜トランジスタの約10倍の電界効果移動度を示す。
しかし,水素は酸素と混合すると爆発の危険があるため,従来の水素ガスを用いた製造法には安全性の課題があった。研究グループは2024年8月に,水素ガスを使わずに高性能薄膜トランジスタを実現したが,その際には薄膜作製容器内の圧力を精密に制御する複雑な工程が必要だった。
研究グループは,酸化インジウム薄膜の原料として水素を含む,水酸化インジウムを用いた。水酸化インジウム粉末を圧縮してタブレット状に成形し,真空容器内で紫外線レーザーを照射して蒸発させ,薄膜トランジスタ用の基板上に成膜した。この際,従来必要だった複雑な圧力制御は行なっていない。
その結果,水素ガスを用いる方法や複雑な圧力制御を伴う方法と同等の性能を有する薄膜トランジスタの作製に成功した。得られた酸化インジウム薄膜中の水素量は,これら従来法で得られる膜と同等であり,電界効果移動度は約90cm2/V·sを示した。
研究グループは,この成果は,次世代ディスプレー用薄膜トランジスタの開発を大きく加速させるものだとしている。
