東大と理研、量子センシングの応用に期待される薄膜振動子の作製に成功

東京大学と理化学研究所は、エピタキシャル成長した高品質な窒化チタン薄膜を用いて、損失の少ない高性能な薄膜振動子を作製することに成功した(ニュースリリース)。

(図)作製した薄膜振動子サンプル

微細加工技術によって作製された機械振動子は、光やマイクロ波を用いてその振動を高精度に測定・制御することができる。近年、その精度は量子ゆらぎが観測できるほど高くなってきており、機械振動子の量子制御に関する研究が進められている。

量子状態は、それぞれ特徴的な寿命を持っており、ある時間で壊れてしまうことが知られている。機械振動子の大きな特徴の一つに、非常に長い寿命を持つということが挙げられる。この長い寿命を利用することで、量子センシングや量子メモリといった量子技術の性能を大きく向上することが期待されている。

こうした応用に向けて、薄い膜を太鼓のように張った構造を持つ薄膜振動子が着目されている。その理由は、高い応力を持つ薄膜を用いることで、長い間振動が維持される薄膜振動子を作製することができるため。

これまでは高応力な窒化シリコンが主に用いられていたが、極低温では窒化シリコンがアモルファスであることに由来した損失が問題視されており、損失の少ない結晶性の材料を用いることが求められていた。

加えて、窒化シリコンを用いて電気的な測定・制御を行なうためには、導電性の電極を薄膜の上に追加で用意する必要があり、それが振動子のエネルギーの損失を増やしてしまうという問題もあった。

研究グループは、シリコン基板上に製膜された高品質な結晶性窒化チタン薄膜により薄膜振動子を作製した。この膜は非常に大きな応力を持っているのに加えて、低温で超伝導体となることから、超伝導回路を用いた量子マイクロ波技術との相性が良いと言える。

さらなる高性能化のために、窒化チタン薄膜振動子の周囲にシリコンで作られたフォノニック結晶を設けることにより、薄膜振動子のエネルギーが周囲に緩和することを防いだ。

作製した薄膜振動子の性能を評価するため、低温下(約2ケルビン)で光干渉計を用いた測定を行ない、その結果、振動が800万回以上続く非常に長い寿命を持つことがわかった。薄膜の応力と寿命の温度依存性についても測定し、いずれも温度が低くなるほど高くなることがわかった。

研究グループは、この成果は、超伝導量子ビットをはじめとした超伝導量子回路と組み合わせることで、マイクロ波を用いた量子センシングや量子メモリとして応用されることが期待されるとしている。

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