京都大学の研究グループは、光超音波イメージングを用いて、ケロイドの再発に微小循環の高酸素化が生じることを明らかにした(ニュースリリース)。

ケロイドは難治性皮膚疾患の一つであり、強いかゆみや痛みを生じる。ステロイド局所注射が標準的治療だが、再発率は高く、発見が遅くなればケロイドの拡大につながり、患者さんはさらなる注射の苦痛を余儀なくされる。そのため、早期発見が重要ですが、ケロイドがいつ、どこに再発するかは予測が困難であった。
光超音波イメージングは、光音響効果を用いて血管を撮影する新しい画像化技術。光エネルギーで血管を微細に膨張させて、膨張で生じる音波を超音波検出器で探知する。造影剤を使用せず、被曝も無いため、体に優しい画像診断法として期待されている。研究グループはこの非侵襲性に注目し、光超音波イメージングを用いてケロイドとその周囲を包括的かつ経時的に観察することにした。
研究グループらが開発した光超音波イメージングは、四方八方に分散する音波をお椀型のセンサーでキャッチする。さらにお椀型センサーがぐるぐると回転しながら体表を撮影し、1か所あたり複数枚の画像を平均化することによって、0.2㎜の空間分解能で血管を高精細に描出できる。画像は3次元であり、2つの波長の異なる光を交互に照射することで血管内の酸素化の状態を計算することができる。
この研究では、5名6病変の患者さんに対して、治療前、1か月後、3か月後、6か月後の観察ポイントで撮影を行なった。光超音波イメージングと超音波診断装置の3次元イメージングで得られた画像を融合し、ケロイドと血管の位置関係を把握した。治療後に2病変はケロイドの高さが減少して平坦(退縮)となったが、3病変はいったん高さや発赤が減少した後に、3か月から6か月で再び高さや赤みが増加(再発)し、残る1病変は赤みのみ(紅斑)が再発した。
いずれの症例でも、ケロイドの血管はケロイドの表層に集簇する微細な血管と、ケロイドの深部にある真皮下静脈網で構成されていた。3次元で取得した血管画像を浅い層と深い層で分離(セグメンテーション)して酸素化の状態を解析した。酸素化については、ケロイドから離れた領域に含まれる同一血管の酸素化状態を基準(0)とした相対的指標を用いて評価した。全症例で深い層にある真皮下静脈網は中等度から高度の酸素化を認めた一方、表層血管については退縮例と再発例で酸素化に大きな違いが認められた。
退縮例では表層血管は低酸素状態が持続していたが、再発例では再発する部位に先行して高酸素な微小血管が出現し、この高酸素な血流はケロイドを迂回して深部の真皮下静脈網へと還流していた。つまり、再発するケロイドには静脈の異常な高酸素化があり、ケロイド周囲に何らかの動静脈シャントが存在する可能性を示唆するという。この結果から、高酸素化した微小血管の出現はケロイド再発の時期と場所を予測するマーカーとして利用できる可能性がある。また、ケロイドの増殖メカニズムに動静脈シャントが関与する可能性は、ケロイドの病態を解明する一歩となるという。
この研究ではケロイドの潜在的な活動性を可視化するツールとして有用であることがと期待され、さらに、光超音波イメージングは、他の増殖性病変の診断や研究への応用も期待されている。



