キヤノンは、公益社団法人発明協会が主催する令和8年度全国発明表彰において、「経済産業大臣賞」および「日本弁理士会会長賞」を受賞した(ニュースリリース)。本表彰は日本の科学技術の向上と産業の発展に寄与した多大な功績を称えるものであり、同社は光学技術と医療デザインの両面で高い評価を得た。
「経済産業大臣賞」を受賞したのは、超高感度カメラ「MS-500」に搭載されている単一光子計測イメージセンサー(SPADセンサー)に関する発明である。SPADセンサーは、画素に入ってきた光子(光の粒子)を雪崩のように増倍させることで、微弱な光を大きな電気信号として計測できるデバイスであり、従来のCMOSセンサーでは困難だった極低照度下での撮像を可能にする。従来は感度向上とノイズ低減がトレードオフの関係にあったが、本技術では電荷を画素中央に集めてから確実に増倍させるという新たな構造を採用することで、ノイズを従来の約1/1000に低減しつつ感度を約7倍に向上させることに成功した。この画期的な成果により、夜間監視のみならず、車載分野での事故防止や医療分野への応用など、幅広い領域での活用が期待されている。


また、「日本弁理士会会長賞」は、超音波診断装置「Aplio me」の意匠に対して授与された。このデザインは、装置の奥行きを抑えたコンパクトな構成により医療従事者の足元に十分な空間を確保し、検査時の身体的負担を軽減するとともに、スリムな形状によって患者との円滑なコミュニケーションを可能にしている。外観には水平垂直の直線基調で信頼感を与えるシルエットを採用する一方で、患者の視界に入る部分には滑らかな曲線を用いることで安心感を与える造形を実現した。

これらの優れた発明・意匠を社会に実装し顕著な効果をあげたとして、同社代表取締役会長兼CEOの御手洗冨士夫氏には「発明実施功績賞」が贈られている。キヤノンの今回の受賞は、光技術の限界を押し広げるセンサー開発力と、現場のニーズに寄り添う医療機器デザインの双方が、現代社会の課題解決に大きく寄与することを改めて示したといえる。



