京大ら,背景光子がほぼ無いナノダイヤモンドを開発

京都大学,千歳科学技術大学,量子科学技術研究開発機構は,Snイオンをナノダイヤモンドに注入し熱処理を施すことで,ノイズとなる背景光子の発生がほとんど無い,単一 SnV中心を内包するナノダイヤモンドの開発に成功した(ニュースリリース)。

近年,光の波長がそろった単色性が高い光子を生成し,かつ量子状態を保存するメモリとして利用可能な,ダイヤモンド中の単一スズ(Sn)欠陥(Vacancy)中心(SnV中心)が注目されている。

しかし,これまで単一 SnV中心の形成はバルクダイヤモンドに限られており,ナノメートルサイズの微小なダイヤモンド粒子(ナノダイヤモンド)では実現されていなかった。

研究グループは,イオン注入法を用いてSnイオンをナノダイヤモンドに注入し,その後,真空中で熱処理を行なうことで,ノイズとなる背景光子の発生が極めて少ない,単一SnV中心内包のナノダイヤモンドの開発に成功した。

実験では,高圧高温法で合成されたナノダイヤモンドにSnイオンを注入した。その後,真空中で1200℃の温度で熱処理を行ない,ナノダイヤモンド中にSnV中心を形成させた。観察の結果,10nm以下の非常に小さなサイズのナノダイヤモンドであることがわかった。

光学特性の評価には,波長520nmのレーザー光を励起光として用いた。このレーザー光を,100倍の顕微鏡用対物レンズを用いて,石英ガラス基板上に分散させたナノダイヤモンドに集光した。そして,発生した光子の発光スペクトルを分光器で観測するとともに,2つの単一光子検出器を使用して単一光子性を評価した。

その結果,波長620nm付近において,SnV中心の発光ピークを観測することに成功した。また,発生光子の単一光子性を評価したところ,遅延時間が0nsにおける同時計数値が,0.04±0.11と極めて小さな値を示した。

この同時計数値は,0.5以下で単一光子発生の条件を満たし,0に近づくほどノイズとなる背景光子の発生が小さくなる。この小さな同時計数値より,ノイズとなる背景光子の発生がほとんどない,単一SnV中心を内包するナノダイヤモンドであることがわかった。

さらに,励起光強度を変化させながら発光光子数を測定したところ,発生光子数が飽和するカウント数が,毎秒492,000と推定された。この値は,同様の手法で形成されたシリコン欠陥中心よりも有意に大きく,SnV中心が明るく発光することを示しているという。

研究グループは,今回得られた成果は,光子を用いた量子コンピュータや長距離量子暗号通信,さらには,量子センシングなどの研究の飛躍的な発展に貢献すると期待されるとしている。

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