理化学研究所(理研)や宇都宮大学などの国際共同研究グループは、次世代の先端半導体製造に期待される「2µm固体レーザー」を用いた極端紫外(EUV)光の発生において、複数のレーザーを同時照射する「マルチレーザー照射法」の有効性を世界で初めて実証した(ニュースリリース)。これにより、EUV光源の発生効率を従来から約40%向上させることに成功した。

生成AIやスマートフォン、自動運転などを支える先端半導体の製造には、波長13.5ナノメートルのEUV光を用いた露光装置が不可欠である。しかし、現在のEUV露光装置は駆動源に炭酸ガスレーザーを採用しており、装置1台あたりの消費電力が1メガワット(MW)を超える点が極めて大きな課題となっていた。実際に、装置を多数運用する半導体生産大手・TSMCの電力消費量は、台湾全体の1割に迫る規模に達していると報じられている。このため、電気から光への変換効率に優れた波長2µm帯の固体レーザーへの移行が世界中で検討されてきたが、EUV光の発生に必要な高出力を単一のレーザーで実現することは難しく、実用化のめどは立っていなかった。
そこで研究グループは、1台の超高出力レーザーに依存するのではなく、複数の2µm固体レーザーを同時に照射してスズプラズマを生成する新アプローチ「マルチレーザー照射法」に挑んだ。実験では、1台の「Ho:YAG固体レーザー」から出力されたビームを2本に分割し、真空容器内のスズ平板ターゲットへ同時に集光照射した。総レーザーエネルギーは単一照射時と同じ40ミリジュールに保ったまま「本数」を2本に増やしたところ、EUV光の変換効率が2.6%から3.6%へと向上し、約40%の効率向上を達成した。これは、2µm固体レーザーを用いたEUV光源として世界最高レベルの数値だという。

効率向上の要因は、2本のレーザーを照射することで加熱されるプラズマ領域が広がり、プラズマの急激な冷却が抑えられたことにある。また、発生したEUV光源のサイズは約60〜70µmに抑えられており、次世代の「高NA・Hyper-NA EUV露光装置」で要求される100µm以下という条件もクリアしている。
今回の成果により、1台の超高出力レーザーの開発に依存せず、低出力のレーザーを複数組み合わせることで高効率なEUV光発生を可能にする新たな設計指針が示された。研究グループは今後、照射するレーザー本数の最適化や、実際の露光機で用いられる液滴状(ドロップレット)のスズターゲットを用いた実証を進める予定だという。本成果は、露光装置の省電力化を大きく後押しし、日本の半導体分野における国際競争力の強化にも寄与することが期待されるとしている。



