光学が“内在する”未来、広がる可能性
「一財多能」が生み出す可能性
─メタサーフェス研究の面白さについて
私はもともとナノテクノロジーの分野から研究生活をスタートしました。この分野の面白さは、同じ材料でも形や大きさを変えるだけで性能が大きく変わる点にあると思っています。そういう意味では、その究極の一つがメタマテリアルやメタサーフェスです。現在の材料工学は大変進んでおり、さまざまな元素を組み合わせることで多様な機能を実現できます。
ただし、レアアースのような特殊材料を用いると高コストになってしまいます。その点、メタサーフェスの魅力は、シリコンや金、銀といった比較的汎用可能な材料でも、形状や構造を工夫することで多様な機能を生み出せる点にあります。特別な材料に頼らず新しい機能を実現できることは、大きな利点だと思います。
─メタマテリアル・メタサーフェスが注目されている背景とは
メタマテリアルが出てきた当時は、クローキング、いわゆる透明マントの実現が注目されました。これはマイクロ波領域では実証されていますが、可視光での実現は現在でも非常に困難です。そのため話題性は高かったものの、応用が進まず、関心は次第に落ち着いていきました。そうした中で登場したのが、二次元構造で比較的作製しやすいメタサーフェスです。さらに誘電体メタサーフェスの登場により性能も大きく向上しました。

そしてメタサーフェスを応用した平面レンズである「メタレンズ」の登場によって実用化の道筋が見え、企業の関心が一気に高まりました。企業が本格的に参入すると研究の進展も加速します。現在の盛り上がりは、この流れの中で生まれたものだと考えられます。
─メタレンズは実用化目前ですが、直面している課題はありますか
従来のレンズは曲率を連続的に変化させることで光を滑らかに制御します。一方、メタレンズはメタ原子が離散的に配置された構造です。そのため位相制御に限界があり、これが大きな課題とされてきました。しかし最近は状況が変わりつつあります。従来は欠点とされていた色分散や偏光歪みを、逆に活用するという考え方が出てきました。例えば、色分散を利用すればより多くの色情報を取得でき、偏光歪みからは偏光情報を読み取ることができます。
つまり、従来は補正対象だった現象をあえて活用し、高機能な画像取得を目指す「逆転の発想」です。メタサーフェスは単なるカラー撮像にとどまらず、多様な機能を容易に付与できるため、従来とは異なる新しいレンズといえます。さらに、そこにAIなどの機械学習が加わることで、物理と計算の両面から性能が強化されます。従来の撮像素子では難しかった機能も、メタサーフェス1枚で実現できる可能性があります。



