東京大学大学院農学生命科学研究科の矢守航准教授らの研究グループは、スタンレー電気との共同研究により、レーザーダイオード(LD)を用いた精密な光制御が植物の光合成や成長を劇的に変化させることを明らかにした(ニュースリリース)。

これまで植物工場の人工光源としてはLEDが主流であり、主に栽培に最適な「光の色(ピーク波長)」に関する研究が進められてきたが、本研究では「波長の幅(波長域)」という新たな光環境パラメータに着目している。LEDは約50nmという比較的広い波長域で発光するのに対し、LDは数nm以下という極めて狭い波長域で光を照射できる特性を持つ。

研究グループは、タバコやレタス、シロイヌナズナを用い、広帯域のLEDと狭帯域のLDが植物の反応に与える影響を詳細に解析した。その結果、青色単独光の照射において、青色LDは葉をより立ち上がらせる(直立化させる)効果があり、植物体内部の下層まで光を届きやすくすることが判明した。この草姿の変化は、高密植栽培で大きな課題となる下位葉の黄化や老化を有意に抑制し、レタスにおいては下位葉のクロロフィル量を34.1%も高く維持することに成功している。
さらに、植物工場で一般的に利用される赤青混合光の条件下では、LD照射はLED照射に比べて高い光合成活性を示した。LD照射によって光エネルギー利用効率(量子収率)や電子伝達速度が向上し、植物の乾燥重量はタバコで27.5%、レタスで20.9%、シロイヌナズナでは84.9%も増加するという顕著な成長促進効果が確認された。また、LD照射下の植物ではストレス応答として蓄積されるアントシアニン量が大幅に低下しており、連続照射環境下においても植物への光ストレスが小さいことが示唆されている。


本研究成果は、光の波長域を制御することで植物の形態や光合成能力、健康状態を自在に「デザイン」できる新たな可能性を提示している。波長を極めて高精度に制御でき、小型化や省エネルギー化も可能なLDは、将来の多段式植物工場や都市型農業、さらには限られた空間での効率的な光利用が不可欠な宇宙農業における次世代の有力な光源として、その社会実装が期待される。






