宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所(ISAS)の甚野裕明助教らの研究グループは、全厚4μmという超薄型構造のペロブスカイト太陽電池が、極めて高いガンマ線耐性を有することを世界で初めて実証した(ニュースリリース)。ペロブスカイト太陽電池はイオン結合性に由来する高い耐放射線性を持ち、軽量かつ高効率であることから次世代の宇宙用太陽電池として期待されているが、これまでは主にガラス基板上での評価にとどまっており、5μm以下の超薄型構造における耐性は明らかになっていなかった。


本研究では、耐放射線性に優れたパリレンおよびSU-8を用いた超薄型基板上にペロブスカイト太陽電池を作製し、宇宙基準の10倍以上に相当する890 kradの高線量ガンマ線照射試験を実施した。試験の結果、従来のガラス基板を用いたデバイスでは基板の着色(色中心の形成)に起因する光吸収によって効率が初期値の86%まで低下したのに対し、超薄型基板上の太陽電池は照射後も初期値の99%という極めて高い変換効率を維持した。これにより、放射線による劣化がデバイス固有の影響よりも基板の厚さや材質に大きく依存することが浮き彫りとなった。

開発された超薄型ペロブスカイト太陽電池は、従来の宇宙用薄膜太陽電池と比較して10〜100分の1の厚さを実現しており、ガラスによる保護膜を必要としないため、軽量性とフレキシブル性を最大限に活用できる。この成果は、打上げ時にはコンパクトに折り畳み、宇宙空間で大面積に展開して発電する「展開型太陽電池パドル」の基盤技術となるものである。今後は、大電力を必要とする超小型地球周回衛星や、太陽光が極めて弱い木星・土星といった深宇宙探査ミッションにおいて、探査機の軽量化と電力確保を両立する新しい宇宙用電源としての応用が期待されている。



