構造化光を直接つくる
─光渦レーザーの研究について
光渦とは、軌道角運動量を持つ特殊な光です。光の波面がらせん状の構造を持っており、通常のガウシアンビームとは異なる性質を示します。こうした構造化光は、光通信、量子情報、センシング、光ピンセットなどで注目されています。
現在は、外部の光学素子を使って光渦を作る方法が一般的ですが、もし半導体レーザー素子から直接光渦を出すことができれば、装置を小型化できます。GaN系VCSELに曲面ミラー構造や発光層の設計を組み合わせることで、構造化光を直接発振させる可能性を探っています。
企業経験を大学研究へ
─企業での研究と現在の研究の違いは何か
企業では、最終的に製品や事業につながるかという視点が重要でした。大学ではより自由に基礎的な課題に踏み込むことができますが、社会で使われるデバイスにするためには、量産性や信頼性、コスト、応用先の要求を意識する必要があります。
私自身は、基礎研究と応用研究は切り離すものではないと思っています。基礎的な理解がなければ、よいデバイスは作れません。一方で、応用先を見ない研究は、どこを改善すべきかが見えにくくなります。大学では、学生と一緒に基礎に立ち返りながらも、将来どのように使われるのかを意識した研究を進めたいと考えています。
─新しい研究室での展望は
半導体レーザーの研究は、材料、プロセス、光学、電気、シミュレーション、AIなど、多くの分野が関わります。ですから、一つの専門だけに閉じるのではなく、いろいろな分野に興味を持てる人に来てほしいと思っています。
実験では、思った通りにいかないことも多くあります。むしろ、うまくいかない理由を考え、仮説を立て、次の実験につなげていくことが研究の本質です。学生には、手を動かしてデバイスを作る力と、得られた結果を物理的に考える力の両方を身につけてほしいです。
─光デバイス研究の魅力はどこにあるのか
光デバイスは、小さな構造の中で、材料、電流、光、熱が複雑に関係しています。数μm、数十nmの違いが性能に大きく影響することもあります。一方で、その小さなデバイスが、ディスプレイや通信、エネルギー、医療、計測といった応用につながります。そこが面白いところです。
半導体レーザーは、基礎物理とものづくりが近い分野です。理論やシミュレーションだけでなく、実際にウエハーを加工し、素子を作り、光らせて評価する。その一連の流れを経験できることは、学生にとっても大きな学びになると思います。



