ミニインタビュー

山田先生に聞く
レーザースライシングで“見えない加工”に挑む
─現在の研究を始めたきっかけについて
埼玉大学の研究室に来た際,さまざまな先生方の実験を一通り見た中で出会ったのがレーザースライシングでした。
一般的な加工というと,切削工具で材料を削り,切りくずを出しながら,音を立てて加工するイメージがありますが,レーザースライシングでは,音もほとんどせず,切りくずも出ない。それなのに,半導体ウエハーなどを割ることができるのが不思議で,まるで魔法のような加工法だと感じました。
─この研究の面白さについて
レーザースライシングでは,光が工具になります。太陽光がガラスを透過するように,光には材料の内部へ入っていく性質があります。そのレーザーを材料の内部まで透過させ,そこで集光することで,材料の内部から直接加工できる。
「加工は表面から行なうもの」という従来の常識とは違い,材料の中から加工できるという発想そのものが,非常に面白いところだと思います。
─研究している中で苦労していること
内部で加工しているため,加工中の現象を直接見られないことに苦労しています。
透明度がない材料も,目には見えない波長の光を使えば内部を加工することができますが,加工中に「何が起きているのか」がまったく分かりません。音もしないし,切りくずも出ない。加工が終わった後に「こうなったんだ」と確認するしかないというところに難しさを感じます。
─この研究がどのように応用されることを期待しているか
もちろん加工技術ですので,最終的には実用化につなげたいと考えています。例えば,半導体製造や光学レンズ製造のラインに,この技術を組み込んでいくことが一つの目標です。研究室の中だけで終わる技術ではなく,実際の製造現場で使われる技術にしていくことが,今後の大きな目標です。
─若手研究者が置かれている状況について
大学教員の場合,研究だけをしていればいいわけではありません。教育や学会活動,さらに,学内のさまざまな業務も担当する必要があります。業務に追われて,自分が本当にやりたかった研究の時間が取れなくなってしまう。
その一方で,成果主義の側面もあり,論文数などの業績も求められます。研究以外の仕事をしながら,研究成果も出していかなければならないというのが,難しいと感じています。
─若手や学生に向けてメッセージをお願いします
やはり「自分の手を動かして,考えながら実験を楽しんでほしい」と思います。最近は,AIなどを使って,効率よく,スマートに研究を進めることもできるようになりました。
ただ,加工というのは,実験をしてみなければ分からないことがあります。音を聞いたり,匂いを感じたり,材料の変化を自分の目で見たり。そういった五感を使った経験を積んでおくことは,これから先,とても役に立つと思います。
実験ならではの面白さを,ぜひ楽しんでもらいたいですね。
(聞き手:望月あゆ子)
やまだ ようへい
所属:埼玉大学 大学院理工学研究科 准教授
2015年に東京農工大学機械システム工学専攻博士後期課程を修了。2015年に埼玉大学大学院理工学研究科の助教を経て,2024年から埼玉大学大学院理工学研究科准教授に就任。現在に至る。
趣味:ゴルフをすること
(月刊OPTRONICS 2026年10月号)





