令和8年版 防衛白書
防衛省は、令和8年版防衛白書を公表した。今回の白書は「未来につながる安全保障」をテーマに、日本を取り巻く安全保障環境とともに、防衛力を支える技術力や産業基盤の重要性を取り上げている。従来の装備や部隊整備に加え、AI、無人機、宇宙、サイバーなど、「新しい戦い方」への対応が前面に出ている点も特徴となっている。
(林 諭子)

そもそも、なぜ今、防衛予算が増えているのか。背景には、中国、ロシア、北朝鮮という周辺の脅威が一気に高まったことに加え、弾道・巡航ミサイルの高度化、無人機の大量運用、サイバー攻撃、宇宙利用の拡大など、安全保障を取り巻く技術と環境の変化がある。
政府は2023~2027年度の防衛力整備計画で、5年間の防衛力整備の水準を43兆円程度とし、令和8(2026)年度の整備計画対象経費は8兆8,093億円となった。増額分は新しい装備の導入だけでなく、弾薬や部品の確保、装備品の維持・整備、施設の強靱化、人材、防衛産業・サプライチェーン、研究開発などにも向けられている。
ただし、防衛力の強化を、そのまま「戦争をするための準備」と捉えるだけでは、政策の目的を十分に捉えにくい。安全保障では外交や国際協力と並び、相手に「攻撃しても目的を達成できない」「得られる利益より代償が大きい」と認識させ、武力行使を思いとどまらせる「抑止」が重要な考え方となる。防衛力には有事への対処だけでなく、そもそも有事を起こさせないための備えという側面がある。
また、安全保障は戦闘だけを意味せず、平時の警戒監視、情報収集、サイバー・宇宙領域への対応、国民保護なども含む。一方、巨額の公費を用いる以上、必要性や費用対効果について継続的な検証が求められることは言うまでもない。

防衛白書
防衛白書は、日本を取り巻く安全保障環境や防衛政策、防衛省・自衛隊の取り組みを広く紹介するため、防衛省が毎年刊行する資料である。正式名称は「日本の防衛」。令和8年版では、無人機、AI、量子、通信などの先端技術や、防衛生産・技術基盤の強化も重要なテーマとなっている。
新しい戦い方と光技術
特に存在感を増しているのが無人機である。偵察、監視、通信中継など用途は広がり、多数の機体を早期に発見、識別、追尾する能力も求められる。ここには可視光カメラ、赤外線センサー、レーザー測距、LiDARなど多くのフォトニクス技術が関わる。電波センサーと組み合わせるセンサーフュージョンも重要となる。
高出力レーザーにも関心が集まる。小型無人機などへの対処では、発射当たりのコストを抑えられる可能性がある一方、天候や大気、精密追尾、熱処理、電源確保といった課題がある。実用化にはレーザー光源だけでなく、ビーム制御、補償光学、画像処理、熱マネジメントまでを統合する必要があり、産業用レーザーや精密光学で培われた技術との接点は少なくない。





