光電融合技術、実装課題と市場の行方を議論

「今後のAI普及のカギは光電融合技術になるといっても過言ではない」―このように語られたのは、電子・実装技術の専門展『JPCA Show 2026』で開催されたイベント内でのことだ。JPCA Showは2026年6月10日から12日までの3日間、東京ビッグサイトで開催され、そのイベントは会期2日目となる11日に『光電融合セミナー・展示』として行なった。イベントには約120名の聴講者が集まった。

AIの普及に伴い,データセンターでは演算性能と通信容量の拡大が急速に進む一方,消費電力や電気配線の伝送損失が大きな課題となっている。こうした背景から,半導体パッケージや基板上の電気配線を短くし,光配線を導入する光電融合への関心が高まっている。セミナーに多くの注目が集まったのも、その背景があり、ビジネスの芽を探る聴講者の視点を感じられるものとなった。

(写真)光電融合セミナーに聴き入る聴講者。光電融合への注目度が際立つ。

セミナーではまず,オプトロニクス社の山口望氏が「光電融合基礎の基礎・拡大する背景とその適用分野」と題して講演した。山口氏は,光電融合をボード上や半導体パッケージ上の電気配線をできるだけ短くし,光配線に置き換える技術と位置づけた。高速化が進むほど,電気配線では損失や発熱,消費電力が課題となる。これに対し,光配線は大容量・低損失伝送に優れることから,AIデータセンターを中心に,今後の情報処理基盤を支える実装技術として期待されるとした。

続いて,野村総合研究所 グローバル製造業コンサルティング部 チーフコンサルタントの佐々木健一氏が,「データセンター市場最新動向と周辺産業の役割の変化」について講演した。生成AIの利用拡大により,データセンターではGPUなどの演算資源に加え,プロセッサ間,サーバー間,ラック間で大量のデータを高速に移動させる能力が重要になっている。演算性能が向上しても,データ移動がボトルネックになればシステム全体の性能向上にはつながらない。佐々木氏は,光電融合がデータセンター内のデータ移動を効率化し,消費電力を抑えながら伝送容量を拡大する技術として重要になると説明した。

同じく野村総合研究所 グローバル製造業コンサルティング部 エキスパートの鍬塚洋史氏は,「CPOに関連する技術・産業動向」を紹介。CPO(Co-Packaged Optics)は,スイッチASICなどの近傍に光エンジンを配置し,電気配線距離を短縮することで,高速化と低消費電力化を図る技術であるが、従来のプラガブル光トランシーバーに比べ,光機能を半導体に近づけることで信号損失を抑えられる一方,熱設計,電源供給,光接続,組立精度,保守性など,多くの課題を同時に解決する必要がある。鍬塚氏は,CPOの実用化には,光デバイス,半導体パッケージ,基板,コネクタ,検査装置などを含む産業横断的な連携が不可欠であるとした。

その後に登壇した新光電気工業 開発統括部 主席部長の片桐規貴氏は,「光電融合に対する当社の取り組み」と題し,半導体パッケージ技術の観点から講演した。AI半導体の高性能化に伴い,パッケージ基板は大型化・高密度化しており,複数のチップレットを組み合わせる実装では,パッケージ内外で多数の高速信号を扱う必要がある。光電融合では,電気信号と光信号をどの位置で変換し,どのようにパッケージへ取り込むかが重要となる。片桐氏は,パッケージ基板の大型化や平坦性,シリコンインターポーザとの接続,実装精度,信頼性などを課題として挙げ,半導体パッケージが光電融合を支える機能基盤になっていくとの考えを示した。

次の光産業技術振興協会 開発部長代理の杉立厚志氏は,「『情報処理フォトニクス』光テクノロジーロードマップ」について講演した。杉立氏は,今後の情報処理基盤では,データセンターにおける大容量・低消費電力伝送に加え,フィジカルAIやエッジAIなどの応用でも光技術の役割が広がると説明した。エッジ領域では,高速性だけでなく,小型化,低消費電力,高温動作,長期信頼性も重要となる。光電融合は,データセンター向けの高速伝送技術にとどまらず,将来の情報処理システム全体を支える技術として位置づけられる。

各講演後には,「市場予想,光電融合の技術的課題,光電融合のエコシステム」をテーマにパネルディスカッションも行なわれた。AIデータセンターの成長を背景に,光電融合市場の拡大が期待される一方,実用化には,光をどこまで半導体に近づけるか,光電変換部をどこに配置するか,パッケージ内外で光接続をどのように行なうかといった技術課題がある。さらに,量産時のコスト,信頼性評価,標準化,サプライチェーンの構築も重要になる。登壇者からは,光電融合を実現するには,半導体,光通信,基板,材料,測定・評価技術を横断するエコシステム形成が必要であるとの見方が示された。

AI時代の情報処理基盤では,演算性能の向上とデータ移動の低消費電力化を同時に実現する必要がある。光電融合はその有力な解の一つであり,半導体パッケージ,光通信,基板,材料,測定技術を結びつける新たな実装領域である。今回のセミナーは,光電融合の基礎から市場,CPO,パッケージ,ロードマップ,エコシステムまでを俯瞰する機会となった。今後の技術と市場の行方に注目したい。

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