京都大学と三井化学は、大型放射光研究施設SPring-8でのX線散乱測定および高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所のフォトンファクトリーにおける走査型透過X線顕微鏡(STXM)を組み合わせた解析、延伸したPE内部における構造の変形挙動を評価し、延伸によって生じる、サブミクロンスケールにおける密度揺らぎの可視化に成功した(ニュースリリース)。

ポリエチレン(PE)は、その優れた機械的特性と成型性から、レジ袋などの日用品や自動車部品に幅広く使用される結晶性高分子。結晶性高分子は、ナノメートルからマイクロメートルにわたる極めて複雑な階層構造を形成することが知られている。
PEは引っ張った際に階層構造に伴い複雑な変形挙動を示し、数百nm(サブミクロン)スケールにおいて不均一変形が起こることがX線散乱測定から示唆されていた。
PE試験片の機械的特性と構造変化の相関を明らかにするため、大型放射光施設SPring8で、室温下で引張試験を行ないながら同時に測定する、放射光時分割X線散乱測定を実施した。その結果、サブミクロンスケールにおける不均一変形が起こる延伸比において、延伸方向に沿う高分子鎖の配向と結晶が壊れる機械的溶融が起こることが明らかになった。
この現象が実空間でどのように起こるのかを明らかにするため、上記の延伸比まで引張したPEを高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所のフォトンファクトリーにおける走査型透過X線顕微鏡(STXM)で観察し、X線散乱測定の結果と組み合わせて評価した。
その結果、実空間において、延伸誘起密度揺らぎを観察することに成功し、フィブリル構造のような高密度(高結晶化度)領域よりも、フィブリル間に存在する低密度(低結晶化度)領域において優先的に延伸方向に分子鎖が配向し、結晶の破壊も起こることが明らかになった。

さらに、延伸過程が進行すると、この配向や破壊が高密度高結晶化度領域に伝播するといった、空間的な結晶化度分布に依存した、段階的な変形挙動を起こすことを明らかにした。今回の研究は、X線散乱測定と組み合わせることにより、PEの延伸過程における不均一な変形挙動をSTXMの実空間観察から明らかにした成果となっている。
研究グループは、階層構造が変形に与える影響を実空間で捉えた画期的な成果であり、高機能な高分子材料の設計指針となることが期待されるとしている。



