量子科学技術研究開発機構(QST)、日本原子力研究開発機構、福井大学、東京科学大学、東北大学は、大型放射光施設SPring-8において、3000℃を超える超高温下で起こる物質の変化をリアルタイムで観察できる新しい分析技術を開発した(ニュースリリース)。

原子力発電では、原子炉の中で核燃料が非常に大きな熱を生み出している。通常は、冷却することで安定した状態が保たれているが、もし冷却が止まると燃料の温度が急上昇し、周囲の材料を溶かしてしまう恐れがある。
こうした事故を防ぐためには、高温に強く、安全性の高い燃料が欠かせない。その開発には、ウラン燃料が超高温になると、どのように姿を変え、周囲の材料とどんな化学反応を起こすのかを詳しく知ることが必要。しかし、燃料と周囲の材料が溶けて反応するような超高温での反応を観察することは困難で、これまでは理論的に推測するしかなかった。
研究グループは、SPring-8の原子力機構専用ビームラインBL22XUにおいて、超高温状態でX線回折(XRD)法とX線吸収分光(XAFS)法を同時に利用できる新しい分析システムを開発した。
このビームラインでは、アンジュレータという非常に強力なX線を作り出せる光源を利用できる。アンジュレータから、さまざまなエネルギーを含む白色X線をまず取り出して、X線分光器に照射する。このとき、X線分光器を動かして白色X線に対する角度を変えることで、特定のエネルギーのX線のみを取り出す。
このX線分光器を高速に動かす技術を構築することで、数十秒毎の化学状態をXAFS法により連続写真のように測定しつつ、同時にXRD法による測定も行なうことができる革新的なシステムを実現している。

さらに、試料を安定して超高温に保つことができる、厚さ0.5mmの薄型電極を備えた小型電気炉を組み合わせることで、試料が溶け始める瞬間から反応が進む過程までをリアルタイムで観察することに成功した。試料サイズを最小限に抑えることで、密閉されたグローブボックス内に設置できるほど装置をコンパクト化しており、安全な環境下での実験を可能にしている。
開発したシステムを用いて、原子炉燃料である二酸化ウランを模した酸化セリウムに、被覆管材料であるジルコニウムと酸化ジルコニウムを加えた混合試料による試験を行なった。加熱しながら測定を行なったところ、約1500℃付近で、XAFS法によってジルコニウムと酸素の結合状態の変化が確認され、それとともに、XRD法によって酸化ジルコニウムの結晶構造の変化を確認することができた。
研究グループは、この成果は、より安全な核燃料の開発に貢献できるとともに、航空宇宙分野などで求められる超高温に耐える新規材料の開発への応用も期待されるとしている。



