京都大学は、大型放射光施設SPring-8を用いた解析により、再生ポリプロピレン内部に残留する異物が破断特性に及ぼす影響を可視化し、その構造的要因を解明した(ニュースリリース)。
近年、使用済みのポリプロピレン(PP)を再資源化し、材料サプライチェーンへ再導入するマテリアルリサイクルが注目されている。しかし、日本におけるマテリアルリサイクル率は2023年時点で約22%にとどまっており、特に一般廃棄物由来のポストコンシューマーリサイクル(PCR)PPでは、機械特性の低下やばらつきが大きな課題となっている。
PCR-PPには、異種プラスチックや着色剤、金属、無機物などの異物が混在することが多く、これらが材料の構造的不均一性や機械的不安定性を引き起こす要因であると考えられている。これまで、分子量低下や非相溶成分の影響に関する研究は数多く報告されてきたが、特定の異物が破壊挙動や極端な物性低下に果たす役割を構造的に示した直接的な証拠は限られている。そのため、再生PPの信頼性向上には、異物と破断挙動の関係を高分解能な構造解析によって明らかにすることが不可欠となっている。
研究グループは、再生PP試験片の機械的特性を評価するため、室温下で引張試験を行なった。その結果、破断伸びに大きなばらつきが確認され、試料の約半数が降伏点付近で早期破断することが判明した。この要因を明らかにするため、破断面を中心に大型放射光施設SPring-8を用いた放射光X線CTおよびマイクロビームX線回折測定を実施し、さらにFT-IR分析を組み合わせて評価した。その結果、再生PP中に残留するアルミ箔およびPETフィルムといった比較的大きな異物が、局所的な構造不均一性を生み、応力集中を引き起こす主要因であることを明らかにした。この研究は、一般廃棄物由来再生PPの機械的不安定性の本質を構造的観点から示す成果となっている。
この研究の結果は、再生PPの信頼性向上には、異物の種類の選別に加え、特にサイズの大きな異物の混入を抑制することが極めて重要であることを示している。異物サイズが大きくなるにつれて破断ひずみが指数関数的に低下する一方、異物が十分に小さい場合には、母材の延性を大きく損なわずに機械的特性を維持できる可能性が示された。
今後は、より高分解能な観察手法と統計的に十分な試料数を用いて、小さな異物を含む多様な異物の影響を体系的に評価する予定だという。さらに、選別工程やペレット化工程におけるフィルター条件の最適化指針を示すことで、高品質なポストコンシューマーPP材料の実用化に貢献することが期待されるとしている。



