北海道⼤学と東京大学は,時分割X線回折像から高分子複合材料におけるナノ粒子の回転ダイナミクスを測定する新たなX線活用手法の開発に成功した(ニュースリリース)。
プラスチックやゴムに代表される高分子材料は,日常生活から産業応用まで幅広く利用されている。高分子にナノ粒子を分散させた高分子複合材料は,高分子単体では発揮できない強度や耐久性を示すため,次世代の高機能材料として注目されている。
こうした材料のマクロな性質は,実はフィラーのナノスケールの動きに大きく依存している。これまでナノ粒子の動きを観察する方法はいくつかあったが,主に並進運動に注目したものが多く,回転運動を汎用的に捉える方法はほとんど存在しなかった。
しかし,この回転運動は高分子との相互作用や局所的な拘束状態を鋭敏に反映し,材料のマクロな特性と密接に関わっており,その動きを可視化する手法の開発が強く求められてきた。
研究グループは,結晶性ナノ粒子が回転する際にX線回折の強度が揺らぐ現象に着目し,これを利用して粒子の回転ダイナミクスを測定できる新しい手法(DXB法)を開発した。今回の研究では,酸化亜鉛(ZnO)ナノ粒子を分散させた複数種類のポリマーをモデル試料として使用した。
まず,これらの試料にX線を照射し,数千枚の時分割X線回折像を取得した。これらの測定には,液体中における粒子の高速な回転を捉えるために,大型放射光施設SPring-8の高輝度X線ビームラインBL40XU を活用し,最大400マイクロ秒/frameの高速時分割測定を実施した。
これらのX線回折像に対して,その回折強度揺らぎを1ピクセル単位で抽出し,その時系列データに自己相関関数を適用することで,粒子の回転速度を評価した。
様々な高分子中におけるナノ粒子のX線回折強度揺らぎから算出した自己相関関数では,自己相関関数の減衰が速いほど回折強度の揺らぎが速く,すなわち粒子の回転速度が速いことを意味する。実際に,PEGのような液体中では回転が非常に速く,ゲルでは中間的,さらにゴムやプラスチックといった固体材料中では非常に遅い回転運動が観察された。
これらの結果により,DXB法を用いることで様々な高分子材料中におけるナノ粒子の回転運動を可視化できることが実証された。さらに,試料の温度を変化させた測定における,わずかな粒子ダイナミクス変化もDXB法で明確に捉えられることが明らかになった。
研究グループは,今回の成果は,今後の高分子材料研究や新素材開発への大きな貢献が期待されるとしている。




