独フラウンホーファー・レーザー技術研究所(Fraunhofer ILT)は、金属部品や滑り軸受、シール、エラストマーローラーなどに、PFASを含まない機能性コーティングを形成するレーザー製造プロセスを開発している(ニュースリリース)。レーザーによる局所的な材料供給、溶融、表面構造化を活用し、耐摩耗性や低摩擦性、非粘着性を備えたPFAS代替コーティングの実用化を目指す。

RePEEKプロジェクトの一環として、サミュエル・モリッツ・フィンク博士(右)は、リバー・ハマ=サレ・アブドラ氏(左)とユリウス・フンケ氏(中央)と共に、金属部品にPEEKを塗布するための新しいレーザーベースの方法を開発している。
PFASは、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物と呼ばれる有機フッ素化合物の総称。耐熱性や耐薬品性、撥水・撥油性、低摩擦性に優れるため、コーティングやシール、潤滑部品など幅広い用途に使用されてきた。一方、自然環境中で分解されにくく、長期間残留することから、各国で規制強化や代替材料の開発が進められている。
PFASの代替には、材料を置き換えるだけでなく、代替材料を基材に強固に密着させ、熱に弱い部品を損傷させず、経済的に成膜する加工技術も必要となる。Fraunhofer ILTは、RePEEK、EPOS、LEMBAS、pureWaterSealの各プロジェクトを通じて、用途に応じたレーザー加工技術を開発している。
レーザーは、必要な場所に短時間だけエネルギーを投入できるため、部品全体を炉内で加熱する従来工程に比べ、基材への熱負荷とエネルギー消費を抑えられる。
RePEEKプロジェクトでは、風力発電機などに使用される大型滑り軸受やシール、ピストン、電磁弁を対象に、PTFEをPEEKに置き換えるコーティング技術を研究している。最初にレーザーによる材料堆積で粗い金属層を形成し、その上にPEEK粉末を供給してレーザーで局所的に溶融する。PEEKが金属表面の凹凸に入り込むことで、金属機能層とPEEK表面層からなる複合コーティングを形成する。
研究チームは、PEEK粉末を低速で安定して供給するサイクロンノズルも開発した。粉末が部品表面で跳ね返るのを抑えることで、材料の利用効率とプロセスの制御性を高めており、この技術について特許を出願している。EPOSプロジェクトでは、この成果を基に、重量が数tに及ぶ大型滑り軸受へPEEKを多層成膜する技術を開発している。
LEMBASプロジェクトでは、フィルム製造や包装、製紙、医療分野で用いられるエラストマーローラー向けの非粘着コーティングを開発している。PEEKやポリアミド、ポリプロピレンなどの高機能ポリマーを用いることで、従来のシリコーンコーティングに比べ、耐摩耗性や化学的安定性、耐久性の向上を図る。
高機能ポリマーは高温で溶融する必要があるが、EPDMなどのエラストマーは熱に弱く、部品全体を炉で加熱すると損傷する恐れがある。レーザーを用いることで、コーティング材料だけを短時間で溶融し、下地のエラストマーに加わる熱を抑えられる。研究チームは、基材を保護しながら密着性を高める中間層の開発も進めている。
pureWaterSealプロジェクトでは、Fraunhofer ILTとフラウンホーファー材料力学研究所(Fraunhofer IWM)が、PFASを使用せず、水系潤滑剤で作動するシール技術を開発している。Fraunhofer IWMが開発したダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜をレーザーで微細構造化し、内部応力や機械的負荷を緩和することで、摩擦の低減と耐摩耗性、寿命の向上を図った。
開発したシールの試作機は、すでに地熱発電所のポンプで稼働している。研究チームは今後、自動車や船舶用プロペラ、風力発電機、農業機械などへの応用と、大型部品への展開、工業生産に向けたプロセスのスケールアップを進める。
Fraunhofer ILTは、PFAS代替には新材料の開発だけでなく、その材料を部品に確実に形成する製造・表面加工技術が不可欠だとしている。レーザーによる局所加工を活用することで、滑り軸受用の低摩擦膜、ローラー用の耐摩耗性非粘着膜、水系潤滑剤に対応するシールなど、用途ごとに最適化したPFASフリーコーティングの実用化を目指す。



