名古屋大学の研究グループは、蛍光寿命顕微鏡(FLIM)を用い、生きた植物細胞内で蛍光波長が極めて近い複数の蛍光タンパク質を識別できることを実証した(ニュースリリース)。
生命科学では、細胞内でタンパク質がいつ、どこに存在するかを調べるため、GFPをはじめとする蛍光タンパク質が広く利用されている。異なる色の蛍光タンパク質で複数のタンパク質を標識する多重イメージングも普及しているが、同時に識別できる色数には限界があり、発光色が近い蛍光タンパク質を区別することは難しかった。
蛍光タンパク質は発光波長だけでなく、励起後に蛍光が減衰するまでの時間である蛍光寿命も種類ごとに異なる。FLIMはこの蛍光寿命を画像化する手法で、色だけでは見分けられない蛍光タンパク質を識別できる可能性がある。一方、植物細胞では細胞壁や葉緑体に由来する強い自家蛍光が生じるため、FLIMを用いた多重観察の有効性は十分に検証されていなかった。
研究グループはまず、発光色が非常に近い4種類の赤色蛍光タンパク質、mCherry、mRFP、mApple、tdTomatoを試験管内で解析した。通常の蛍光強度画像では区別できなかったが、FLIMの測定データをPhasor Plot解析した結果、4種類すべてを明確に分離できた。mCherryとmRFPは、波長差がわずか3nm、蛍光寿命差も約0.2ナノ秒だったが、両者を識別できたという。

続いて、コケ植物ヒメツリガネゴケの生細胞に蛍光タンパク質を導入し、それぞれが核、ペルオキシソーム、葉緑体、細胞膜などに局在するよう設計した。その結果、蛍光強度画像では判別できない組み合わせでも、Phasor Plot上では蛍光寿命の異なる集団として分離され、各信号が想定した細胞内構造に対応した。GFP、NowGFP、BrUSLEEなどの緑色蛍光タンパク質でも同様の結果が得られ、発光色にかかわらず適用できることを確認した。

さらに、ペルオキシソーム、核、葉緑体に局在させた3種類の蛍光タンパク質を同時に観察したところ、蛍光強度画像では重なって見える信号を、蛍光寿命に基づいて三つの集団に分離できた。ペルオキシソームと葉緑体が接する領域では、両者の中間的な蛍光寿命も観測され、複数の蛍光タンパク質が同一画素に存在する領域を検出できる可能性も示された。

今回の成果は、蛍光の色と寿命という独立した情報を組み合わせることで、ライブイメージングにおける同時観察数の制約を緩和できることを示すもの。今後、植物細胞内における複数タンパク質の局在や動態、相互作用の解析への応用が期待される。



