東京科学大など、層状水素化シリカンから可視光照射で水素を取り出せることに成功

東京科学大学、近畿大学、筑波大学は、層状水素化シリカンが、常温・常圧下、可視光の照射のみで水素を放出できることを発見した(ニュースリリース)。

(図)層状水素化シリカンの結晶構造(a)、粉末の写真(b)、走査型電子顕微鏡像(c)、可視光による水素放出特性(d)

水素エネルギーの普及には、水素を安全に貯蔵・運搬できる水素キャリアの開発が求められている。層状水素化シリカン(HSi)は比較的高い質量水素密度を持つ層状物質だが、従来は電子材料や電池材料としての研究が中心であり、水素キャリアとしての活用は検討されてこなかった。

層状水素化シリカンは、二ケイ化カルシウム(CaSi2)を塩酸中でイオン交換することで、簡便に合成できる。合成した層状水素化シリカンの走査型電子顕微鏡像では、薄いシート状物質が積層している様子が確認された。

このシート状物質に対して、電子顕微鏡観察に加えて、X線回折、赤外分光、X線光電子分光など各種構造解析を行なった結果、これまでの研究で得られていたものと同一の構造を持つ層状水素化シリカンであることが確認できた。

合成した層状水素化シリカンの紫外・可視吸収スペクトルを測定したところ、600nm付近の可視光域から短波長側にわたり吸収を示し、半導体的な性質を持つことが分かった。吸収スペクトルから求めたバンドギャップは2.13eVだった。

次に、気相流通系での水素放出評価方法を用いて、水素放出の内部量子収率の作用スペクトルを計測したところ、層状水素化シリカンは600nm以下の可視光照射によって水素を放出できることが明らかになった。特に、太陽光スペクトルの中で強度が最も強い波長域である550nmでは、水素放出の内部量子収率は7.3%に達した。

(図)気相流通系での水素放出評価方法の模式図(a)、層状水素化シリカンの紫外・可視吸収スペクトルと作用スペクトル(b)

この水素放出の光強度依存性を調べたところ、水素放出に必要な光強度の閾値は存在せず、水素放出速度は光強度に対して線形に増加した。

さらに、同じ流通系実験装置を用いて、光源として疑似太陽光、白色LED、緑色LEDを照射した際の水素放出特性を調べた。その結果、疑似太陽光照射で水素が放出されるだけでなく、より光強度の弱い一般的な白色LED照明や緑色LEDを用いても脱水素することが確認された。

次に、光のオン・オフに対する水素放出挙動を調べたところ、分散体においても、可視光照射により水素が放出されることが確認された。

分散系において長時間可視光を照射した際の水素放出特性を調べたところ、可視光照射によりその46.7%の水素を放出できることが明らかとなった。

研究グループは、省エネルギー型の水素キャリアとしての応用が期待されるとしている。

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