IPGフォトニクスジャパンは7月25日,愛知県安城市にある中部テクニカルセンターにて,同社の製品・技術を紹介する見学会「Fiber Laser Days」を開催した。同センターは同社のレーザーを用いた加工試験を実際の材料を持ち込んで行なえる施設で,2024年6月より稼働している。加工後の強度等を備え付けの試験機でその場で検査できる一気通貫型の施設となっており,メーカーや研究機関と年間数百件のテストを行なっているという。
対応する加工は,溶接/ロウ付けのほか,加熱/乾燥,積層/肉盛,切断,ドリリング,アブレーション/クリーニング,表面処理,マーキングなど幅広く,用意されるレーザーも出力やパルス幅,波長,ビームモードなどが異なる70種類以上を数える。
今回,見学会は午前と午後の部に分かれて行なわれ,編集部では同社製品の導入事例を紹介する2件の講演および,溶接強度・接着強度向上を目的としたレーザー表面処理など,約10種のデモ加工が行なわれた午後の部に参加した。


(出展:https://www.cleanlaser.jp/)

「HIGH POWER CL 1000」
(出展:High Power Laser – clean large surfaces quickly with cleanLASER)
講演ではまず,クリーンレーザージャパンが「レーザークリーニングの最新適用事例」として解説を行なった。同社は1997年に設立されたドイツのレーザークリーニングに特化したメーカーの日本法人。昨年よりIPGの発振機を採用している。
レーザークリーニングは,薬品やグラスブラストなどを用いないため廃棄物も少なく,光源だけで大規模な処理も可能。波長約1000nm,パルス幅百数十nsのレーザーを照射した錆や塗膜はプラズマ爆発を起こし,分子レベルでガス化・吸引されるが,レーザーは金属表面で反射するため対象物への熱影響はほとんどないとする。
代表的なアプリケーションは溶接・接着前のクリーニングで,特に表面状態が接合品質に大きく影響するアルミは,薬品ではなくレーザーでドライクリーニングを行なう事例が増えているという。また,金属の溶接後の酸化膜も塗装に影響が出るため,その除去が重要なアプリケーションとなっている。
他にも,金型クリーニングやプラントや橋梁のメンテナンスの他,既存ツールでは対応できない作業への導入事例が増えているという。欧州では自動車メーカーが大きな市場だが,日本では鉄道台車のメンテナンスやタイヤメーカー,石油プラント,水素関連設備などで応用されている。
同社では現在,100Wの装置をロボットに搭載し,サンプルを持ち込んでその場で処理し,パラメーターを変えながら評価することで結果を確認し,最適な条件を見つける試みを進めている。
接着剤メーカーのサンスター技研は「熱硬化型接着剤の活用」と題して,熱硬化型接着剤へのレーザー応用について講演した。従来の熱硬化型接着剤は大型の熱風オーブンで加熱して硬化させるが,加熱時間が長く,局所加熱も難しいという課題がある。
一方,レーザー光を接着剤や被着材に当てて吸収させることで,局所的・選択的に加熱できるため,コストも抑えられる。このレーザー硬化の検証では,IPGの低出力のレーザーを用いた。構造用接着剤と弾性接着剤では,いずれも硬化温度到達,焼き付け時間共に短縮でき,接着強度はオーブンと差がないことを証明した。
また,湿気で硬化する常温硬化型のシリコーン系弾性接着剤に光耐性技術を付与し,接着部をレーザーで局所加熱して膨張させ,解体を可能にすることにも成功した。レーザー照射後は強度が94%低下し,手で簡単に剥がせるようになった。リサイクルへの応用が期待されるという。
同社は,熱硬化型接着剤は省エネと工程短縮が可能になり,設備もコンパクトで導入が容易だとする。常温硬化型接着剤は被着材を破壊せずに分解し再使用が可能となり,リサイクル性向上に寄与するとしている。
レーザークリーニング
100Wナノパルスレーザーを光源とし,重さ3kgのスキャナミラーヘッドをロボットハンドに搭載したレーザークリーニング装置でデモが行なわれていた。スイスABBのロボットハンドは高い繰り返し精度とスピードが得られ,上述の講演にあったように様々なレーザークリーニングのアプリケーションで用いることができる。また,クリーニングのみならず,表面改質にも用いられているという。
レーザー乾燥
こちらも講演にあったサンスター技研の接着剤を用いたデモで,加熱・乾燥用ダイレクトダイオードレーザー「DLS/DLRシリーズ」の2kWモデルを用いて行なわれた。大きなエネルギーを必要とする乾燥炉を代替する技術で,200mm×200mmのエリアを53秒で100℃まで温めることができる。これにより熱硬化接着剤で部品を接着する,または温めると膨張する接着剤で部品を剥がす,といったことができる。
レーザー切断
レーザー光源メーカーのイメージが強い同社だが,レーザー加工機の製造・販売もしている。「LaserCube」フラットベッドレーザー切断機は,コアとなるレーザーの周囲に異なる出力のリングレーザーを囲うアジャスタブル・モード・ビーム・テクノロジーレーザー(AMBレーザー)を登載する。これは厚物でもスパッタの少ない切断加工が可能となる技術。
デモ機はコア径100μm/8kWのレーザーとコア径300μm/7kWのリングレーザーを登載していたが,切りたい対象の厚みに応じた発振器を使うことができる。アルミニウムのほか,鉄,ステンレス,銅,真鍮に対応し,この日は2mmのステンレス板から安城七夕まつりの公式キャラクター「きーぼー」のアクセサリーを切り出すデモを行なった。
レーザースキャナーを用いた加工
重さ15kgの大型2Dスキャナーヘッドを耐荷重60kgのファナックのロボットアームに取り付けた高出力ファイバーレーザー・ロボットセルは,ファイバーレーザーを2台を光源とする2ch仕様。溶接やロウ付け,肉盛,切断,クリーニングなどに使用され,加工によってレーザーを切り替えることができる。
また,開発中だというILWS(統合型レーザー溶接システム)は,ファイバーレーザーと定置型の高出力スキャンヘッドを用い,回転するステージ上のタスクに対して溶接を行なうロータリー・オンザフライ方式を採用する。
Cognexのカメラでスキャンヘッドを介して加工対象を同軸観察し,矩形を検出してそこを基準点として溶接を行なうというもので,モーターのヘアピンやバスバー,バッテリー部品といったEV部品の加工用途を念頭に置いている。同社では今年の秋~冬には溶接が可能なレベルに仕上げるとともに,日本のマーケットでどのように使ってもらえるか,検討を進めるという。











